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本年3月に東京都内で比較的大規模なウェルシュ菌食中毒が発生したので,その概要について報告する。
本事例は3月6日から3月7日にかけて青梅市内にある延べ30事業所の従業員396名中,173名(発症率43.7%)が罹患したもので,疫学調査の結果,患者はいずれも同市内の某飲食店(仕出し屋)で調製された「仕出し弁当」を喫食していることが判明,その後の細菌学的調査により,3月6日の昼食に提供された「チキンディアブル」(鶏肉のドミグラスソース煮)が原因食品と特定された。潜伏時間は1〜20時間(最頻時間は8〜12時間)で,主要症状は下痢(96.5%)および腹痛(80.9%)であった。下痢の性状は「不明」と答えた者を除いて,水様性のものが48.8%,軟便が44.1%であった。患者は概して軽症で,患者の約80%は24時間以内に回復,遅くとも36時間で治癒している。
衛生研究所で実施した原因菌検索の結果,患者糞便145検体中137件から,また,原因食品と目された「チキンディアブル」の残品から,血清型TW6型でエンテロトキシン産生性のウェルシュ菌が検出され,本菌が原因と結論された。また,その主発生要因は原因食品の前日調理と温度管理不良であった。
ウェルシュ菌食中毒は例年それほど発生頻度の高い食中毒ではないが,今年は表に示すように,これまでに本事例を含め既に4事例の発生が認められている。本菌食中毒の原因食品は,「仕出し弁当」や「給食」といった大量に作られる食品に起因することが多く,そのため概して発生規模が大きいのが特徴である。
東京都立衛生研究所 柳川義勢
表.今年1月から6月までに東京都内で患者発生がみられたウェルシュ菌食中毒事例
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