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Vol.13 (1992/6[148])

<特集>
ヘルパンギーナ 1991


 ヘルパンギーナは急性熱性疾患で,口腔内特に口蓋垂付近に数々の小水疱を見るのが特徴で夏かぜの一つである。時に嘔吐,腹痛を訴える。

 感染症サーベイランス情報による1991年のヘルパンギーナ患者発生報告数は全国集計では,1990年と同様例年なみであった。流行は5月末から立ち上がり,第27週(7月第1週)をピークとして9月末には終息した(図1)。ブロック別一定点当たり患者報告数をみると,前年とくらべ東海北陸,近畿,中国四国ブロックではやや減少,その他のブロックではやや増加した(図2)。ヘルパンギーナ患者の年齢は例年通り4歳以下が大部分(82%)を占めた(図3)。

 1991年に臨床診断名および臨床症状に「ヘルパンギーナ」が報告されたウイルス検出例は588である(表1)。例年通りコクサッキーウイルス(C)A群が大部分(82%)を占めた(図4)。CA2は1990年に引き続いて増加した。CA6は1986年以来5年ぶりの増加である。CA4は毎年相当数が検出される型で1991年は中程度の報告数であった(表1)。CA2,6,4各型の検出報告のうちヘルパンギーナ患者からの検出が占める割合はそれぞれ60〜67%であった。いずれも7月をピークとして検出された(表2)。地域別分布をみるとCA2は21府県市,CA6は21府県市,CA4は17府県市で検出された。前年に流行したCA10およびCA5の報告地域は減少し,それぞれ7および8県市であった(表3)。

 ウイルスが検出されたヘルパンギーナ患者の年齢分布は感染症サーベイランス情報の年齢分布とよく一致する。CA2,4は例年通り1歳をピークとして4歳以下が大部分(85%以上)を占めた。これに対し5年ぶりに増加したCA6のピークは3歳,4歳以下は66%で,年長児の割合が高かった(表4)。

 検体の種類は鼻咽喉からの検出が多い(表5)。検出方法をみるとCA群は乳のみマウスが主で,培養細胞と両方で分離陽性となった例が17であった(表6)。

 CA群が検出されたヘルパンギーナ患者483例中18例に発疹,15例に胃腸炎,5例に下気道炎(肺炎を含む)が報告された。



図1.ヘルパンギーナ患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.ブロック別年別ヘルパンギーナ患者発生状況 1982〜1991年(感染症サーベイランス情報)
図3.ヘルパンギーナ患者の年齢分布(感染症サーベイランス情報)
表1.ヘルパンギーナ患者からの年別ウイルス検出状況 1982〜1991年
図4.ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況 1991年
表2.ヘルパンギーナ患者からの月別ウイルス検出状況 1991年
表3.ヘルパンギーナ患者の住所地別ウイルス検出状況 1991年
表4.ヘルパンギーナ患者の年齢別ウイルス検出状況 1991年
表5.ヘルパンギーナ患者の検体の種類別ウイルス検出状況 1991年
表6.ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出方法 1991年





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