HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.13 (1992/6[148])

<国内情報>
エコーウイルス9型による発疹症の流行−福井県


 1991年6月6日〜8月18日にかけて,県の北西部に位置する三国町とその隣接の芦原町で不明発疹症の限局流行がみられた。初発患者は5歳の男子で,6月6日に風邪様症状(咳,鼻汁,発熱38.4℃)に発疹(顔)を伴い,町立三国病院小児科に来院した。以後,同様な症状で同科来訪の患者が相次ぎ,8月中旬までに66名に達し終息した(図1)。患者の年齢は1〜3歳を中心に生後2ヵ月から8歳児まで広範囲におよび,特に兄弟,姉妹等同胞患者が全体の1/4を占めた。発疹の主な出現部位は顔66/66名(100%),躰30/66名(45%),上肢36/66名(54%)および下肢27/66名(41%)等で,平均持続期間は5.9±3.0日であった。発疹の性状は顔では主に不定型紅斑(51/66名),躰および四肢では丘疹を呈した患者が多かった。なお,色素沈着も一部の患者(10/66名)に認められた。

 ウイルス感染症の疑いで採取した30名の患者材料(主に5歳以下)について,HEp-2細胞およびRD-18S細胞を用いウイルス分離を行った結果,咽頭スワブ20/30検体(66.7%)および糞便9/12検体(75.0%)からそれぞれエコーウイルス(E)9型を分離した(表1)。この結果は今流行がE9に起因していたことを強く示唆している。なお,ウイルスCPEの出現および進行は両方細胞で大差なかったが,RD-18S細胞の方が若干感受性が高かった。

 E9は発疹症のみならず無菌性髄膜炎の主要病原体としてもよく知られている。しかしながら,今流行では患者中に髄膜炎症状を伴った症例はなく,発疹と風邪様症状のみ目立ったのが特徴であった。



福井県衛生研究所 松本 和男,村岡 道夫,飯田 英侃
町立三国病院小児科 森 勇


図1.旬別患者発生数
表1.年齢別,材料別ウイルス分離結果





前へ 次へ
copyright
IASR