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Vol.13 (1992/7[149])

<国内情報>
エライザ法を用いて検出したアストロウイルスが原因と思われる急性胃腸炎の集団発生


 最近開発されたサンドイッチエライザキット(米国CDC)を使用することによって,県内に集団発生した急性胃腸炎患者の糞便から,アストロウイルスを検出したのでその概要を報告する。

 1992年2月7日に,県内のスキー場に来た高校生の宿泊客の間に,食中毒様の患者が発生しているとの連絡があった。管轄保健所の疫学調査によると,一行68名中45名が2月7日〜8日の2日間にかけて発症し,主症状は嘔吐,発熱,下痢で,その他に頭痛,腹痛が若干みられた(表)。患者はいずれも2〜3日の発症後軽快した。また,原因食品や感染源は特定されなかった。

 細菌検査は保健所で実施したが,病原細菌は検出されなかった。このためウイルス検索用に患者3名の糞便検体(2月10日採取)が当研究所に搬入され,電顕法,細胞培養法による検索を実施したが,すべて陰性であった。アストロエライザ法による検索を国立予研に依頼し,実施したところ,3検体中3件が陽性を示した。一部の患者は帰省してからの2月14日に検体採取が行われ,その検体が東京都衛研に搬入されているとの情報を得たため,急きょ問い合わせ,東京都衛研の厚意により,さらに2名の糞便検体を入手し,アストロエライザ法による検査を実施した。その結果,この2件とも陽性を示した。

 以上より,本事例は電顕法によるウイルス検出は陰性で,血清も採取されておらず,確認診断はできなかったが,アストロエライザ法による検索を実施した5検体中5件が陽性を示したこと,帰省して採取(2月14日)した検体からも検出できたことなどを加味すると,病原としてアストロウイルスの関与が示唆された。

 今回のアストロエライザキット使用の経験から,同法は,電顕法のような煩雑操作を必要とせず,高感度を有する点において,アストロウイルス診断法としての活用性が高まるものと思われる。



長野県衛生公害研究所 西沢 修一,宮坂 たつ子,小野 諭子
長野県飯山保健所   広井 英子
国立予防衛生研究所  宇田川 悦子


表 患者の臨床症状





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