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Vol.13 (1992/7[149])

<国内情報>
ライム病と病原体保有マダニ―北海道


 「厚生科学研究費補助金医療研究事業」の一環として,マダニを採集しライム病の病原体Borrelia burgdorferiの分離培養を実施した。結果は表1と表2のとおりで,北海道はライム病が発生する条件を備えていることを示している。特にマダニの生息地は本州と異なり,土地の高低に左右されることはない。しかし米国の例で認められるように,マダニのボレリア保有率は地域によって異なることがうかがわれる。また,マダニの生息密度も実際にマダニを採集する難易度からみると,場所により一様でない。一方,ヒトの吸血被害は欧米のように若ダニによるものではなく,雌成ダニによる場合がほとんどなので,雌成ダニの消長がライム病の感染に深くかかわっている。同一地点で採集されてくるシュルツェマダニとヤマトマダニは,前者が4月から6月頃までで,後者は4月から10月までであった。ヤマトマダニはボレリアの保有率が9月と10月に高率となり,保菌動物とのかかわりが十分にうかがわれた。ここに数値を提示していないが,ヒトの吸血被害に関して,シュルツェマダニとヤマトマダニを比較すると,採集時圧倒的にヤマトマダニが多い状況下でも,吸血被害の頻度はシュルツェマダニが極めて高い。両種の吸血依存動物も含め,今後考慮されなければならない一面である。

 日本におけるライム病は,少しづつ明らかとなってきている。しかし,患者を取り巻く諸条件は今なお不十分である。血清診断のみで捕捉できない患者,日本における治療薬の基礎データの欠如,感染予防に対する認識の定着など,今後に残されている課題が多い。



北海道立衛生研究所 佐藤 七七朗,伊東 拓也,亀山 邦男


表1.マダニ科からのBorrelia burgdorferi検索結果
表2.マダニ科からのBorrelia burgdorferi検索結果





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