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手足口病は手のひら,足のうら,口腔粘膜等に水疱を形成する特徴的な急性発疹症である。わが国では年によって流行の規模が異なり,また通常は7月が流行のピークとなるが,秋から冬にかけて流行がみられることがある(図1)。
1991年の手足口病患者発生は8.8人/定点/年ときわめて少なく,1989年と並んで過去10年間の最低数であった(表1)。1992年もひきつづき発生は低レベルであるが(第30週,1.44人/定点/週),8〜9月にかけて北海道で流行がみられ,さらに一部地域で報告が続いている。
手足口病の病原は主としてコクサッキーウイルスA16型(CA16),またはエンテロウイルス71型(EV71)である。CA16はふつう2〜3年周期で流行を繰り返しているが,1987年と1988年は2年連続した流行がみられた。EV71は1982年の夏以降から83年と,さらに1990年に流行し,1990年にはCA16との同時流行となった(図2)。CA16とEV71は流行年には全国的に検出されるが,その他の年には局地的に少数が報告される
(本月報Vol. 12,11,1991参照)。
さらに,コクサッキーウイルスA10型(CA10)も分離数に対する頻度は低いが病原となるので,CA10の流行時にはCA10による手足口病が報告される。
1982〜1991年の10年間に手足口病患者からのウイルス分離が3,987報告された。うちCA16が2,269(57%),EV71が1,095(28%),CA10が157(4%)である(図3)。
手足口病患者からのウイルス分離は鼻咽喉からの報告が最も多いが,皮膚病巣(水疱内容)からも分離される(表2)。CA16の17%,EV71の12%,CA10の6%が皮膚病巣から分離された。また,鼻咽喉と便,鼻咽喉と皮膚病巣,便と皮膚病巣など複数の検体からの検出が342例報告された。大部分は培養細胞,一部がマウスによる分離報告である。
CA16とEV71が分離された手足口病患者の年齢分布を大きい流行がみられた年について示した(図4)。CA16は次第に1歳以下の割合が減少する傾向がみられる。1990年のCA16とEV71の同時流行での両者の分離例の年齢分布に差はみられなかった。
1992年1月以降,手足口病患者からの分離としてCA16が50,EV71が7,CA10が10報告されている。
患者発生状況は,第43週現在,北海道が依然として高レベルにあり,さらに東北および北陸地方の一部でやや上昇傾向がみられている。
図1.手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.手足口病患者からの月別ウイルス検出状況(1982年〜1991年12月)
図3.手足口病患者からのウイルス検出状況,1982〜1991年(1992年9月末現在数)
表2.手足口病患者からの検体の種類別ウイルス検出状況(1982〜1991年)
図4.CA16,EV71が検出された手足口病患者の年齢分布
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