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Vol.13 (1992/12[154])

<国内情報>
インフルエンザウイルスB型分離状況


静岡県(散発)

 当センターでは,1992年1月より異型肺炎患者からの肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)の検出と平行してウイルスの分離を実施している。現在までに検査が終了した検体数は319件,そのうち肺炎マイコプラズマ以外に32株のウイルスを同定した。同定株のうち10月2日に採取した検体からB型インフルエンザウイルス(B型ウイルスと略)が分離されたので報告する。

 分離した患者は清水市草薙在住の4歳の女児で,10月2日,39℃の発熱と咳を主徴として清水市内の総合病院小児科外来を訪れたものである。採取された咽頭拭い液はHEp-2,RD-18S,MDCKの3種類の細胞に接種しウイルス分離を試みたところ,MDCK細胞で細胞変性効果を認めた。そこで,その上清をモルモット赤血球を使用しての赤血球凝集反応,赤血球凝集抑制反応を実施したところ,B型ウイルスと判明した。

 インフルエンザウイルスは流行閑期である春から秋に分離された場合,次冬季の流行株となることが知られている。11月に入り気温および湿度の低下とともにウイルスの活動時期となってきたことから,当該ウイルスによる集団カゼの発生については十分に注意する必要がある(1992年11月6日)。



静岡県衛生環境センター微生物部



長野県(散発)

 長野県下のインフルエンザ流行予測調査(感染源)定点において,11月7日に採取された咽頭拭い液からインフルエンザB型ウイルスを今シーズン県下で初めて分離した。

 ウイルス分離患者は,松本市内の7歳の小学生で,11月7日発症し,主症状は発熱(受診時40.1℃),頭痛,上気道炎,腹痛であった。患者の発症の2日前に妹も同様の症状で定点の医院を受診していた。現在のところ患者の在籍する小学校における集団発生は認められていない。

 ウイルス分離は,MDCKおよびLLC-MK2細胞を用いて実施し,11月17日にB型ウイルスを分離した。分離ウイルスは,当所実施HI試験では,日本インフルエンザセンターから配布された今シーズンのワクチン株である標準抗血清B/Bangkok/163/90に対して,1:256(ホモHI価:512)を示した。県下では昨シーズンB型ウイルスの流行はなかった。このため,平成4年度の県下のインフルエンザ流行予測調査では,この型のウイルスに対する県民の抗体保有状況は低く,今後の動向が注目される(1992年11月25日)。



長野県衛生公害研究所 宮坂 たつ子,西沢 修一,小野 諭子

松岡医院 松岡 伊津夫



山形県(集発)

 11月10日,県の保健予防課より鶴岡保健所管内の鶴岡市内の某中学校でインフルエンザ様疾患が集団発生したとの情報が衛生研究所に入った。

 その中学校における流行状況は,11日現在在籍者数145名中104名がインフルエンザ様症状を示しており,その罹患率は71.7%であった。また,主要症状は発熱(37〜39℃),咳,咽頭痛,鼻汁過多および頭痛などであった。なかでも発熱と咳は必発症状であった。

 衛生研究所では,上記の症状を示した生徒10名から咽頭拭い液と血清を採取しウイルス検査を同11日より開始し,16日,10名中4名から発育鶏卵接種法でB型インフルエンザウイルスを分離した。

 今回の中学生から分離されたB型インフルエンザウイルスは,その抗原性をみると1988年のWHOのワクチン推奨株B/山形/16/88や,今年の夏の散発発生から分離されたB/山形/369/92と類似の抗原性を示した。なお,詳細な抗原解析は現在実施中である。

 山形県では,春から夏(5月から7月)にかけてB型インフルエンザウイルスが分離されており,さらに今年の夏に調査した県内住民のB型インフルエンザウイルスに対する抗体保有率が低かった結果と合わせて考えると,今後,B型インフルエンザウイルスの拡大が予想される(1992年11月16日)。



山形県衛生研究所



大分県(集発および散発)

 大分県におけるインフルエンザ様疾患の集団発生による流行は,例年1月中旬から3月下旬にかけてみられるが,今シーズンは10月20日から22日まで佐伯市立木立小学校2年生の学年閉鎖(在籍者29名,欠席者18名,罹患登校者4名)および竹田市立竹田小学校5年生1クラスの学級閉鎖をはじめとし,現在まで,学年閉鎖5校,学級閉鎖3校が報告され,集団発生による患者報告数は163名に達している。また,感染症サーベイランス定点からの報告数も増加傾向にある。

 集団発生(佐伯市,竹田市)およびサーベイランス定点(大分市,佐伯市,三重町)で採取された咽頭拭い液とうがい液を対象にMDCK細胞でウイルス分離試験を実施した結果,集団発生例から4株,定点から14株のインフルエンザウイルスB型が分離同定された。

 予研ウイルス第一部呼吸器系ウイルス室での今シーズンの標準抗血清による抗原分析の結果(表)によると,その抗原型は今年度のワクチンに入っているB/Bangkok/163/90と全く同じであった。

 以上の如く,大分県においては例年のシーズンに比べて,3ヵ月も早いインフルエンザの流行がみられており,今後の動向を注目したい(1992年11月25日)。



大分県衛生環境研究センター 小野 哲郎,中田 高史,小河 正雄



分離ウイルスの同定成績(静岡県)
分離ウイルスの抗原分析(大分県)





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