HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.13 (1992/12[154])

<特集>
インフルエンザ 1991/92


 日本の1991/92シーズンのインフルエンザの流行は,Aソ連(AH1N1)型が主流,これにA香港(AH3N2)型が加わった混合流行であった。さらにごくわずかにB型もみられた。

 感染症サーベイランスにおけるインフルエンザ様疾患患者は第3週から増加し始め,第7〜8週をピークとして3月末まで引き続いた(図1)。一定点当たり報告数は1991年第27週〜1992年第26週までの累計で125人で,前シーズンの同期間は上回ったが,過去5年間では2番目に低い報告数であった。

 サーベイランス定点の報告が散発例も含めた集計と考えられるのに対し,厚生省結核−感染症対策室に報告される学校等における集団発生報告は集団発生の状況を反映する。この集計によると,このシーズンの集発患者数は27万人で,1990/91シーズンの1/2,1989/90シーズンの1/4であった。前シーズンと比べてサーベイランスの患者報告が増えたわりに,集団発生が少なかったとみられる。

 患者発生規模が小さかったにかかわらず,1991/92シーズンのAソ連型の報告数は本報告システム開始以来の最高数となり,さらにA香港型,B型を加えたインフルエンザウイルス報告数は前年と並び2番目に多かった(表1)。

 ウイルス分離は,まずAソ連型が11月に鳥取と川崎市で検出され,2月をピークとして3月までに51都道府県市から1,962株が検出報告された(表2)。A香港型は12月に新潟,北九州市で検出され,2月をピークとして5月までに43都道府県市から848株が検出報告された(表3)。B型は1〜3月に4府県市から9株のみであったが,4〜7月に北九州市,山形,仙台市,横浜市で合計34株が検出された(表4および 本月報Vol. 13,bV11参照)。

 ウイルス分離例の年齢はAソ連型では5〜9歳(39%)が比較的多いのに対し,A香港型では10〜14歳(38%)が多かった(表5)。この傾向は前年と同様である。

 予研ウイルス第一部呼吸器系ウイルス室でフェレット感染血清を用いて実施した1991/92シーズン分離株の抗原分析(抜粋)によれば,Aソ連型とB型においてはワクチン株から差異のある株はみられなかったが,A香港型については前シーズンの流行中期からみられたA/滋賀/2/91類似株が大部分を占めた(表6)。

 1992/93シーズンのワクチン株には前シーズンと同一組み合わせ,すなわちA/山形/32/89(H1N1),A/北京/352/89(H3N2),B/バンコク/163/90が引き続いて使用されている(ただし抗原量の割合は異なる)。

 1992/93シーズンに入って,10月に静岡で1株,大分で18株,11月に山形で4株,長野で1株,いずれもB型の検出が報告されている(12月7日現在, 本号参照)。



図1.インフルエンザ様疾患患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.インフルエンザシーズン別インフルエンザウイルス検出状況(1980年7月〜1991年6月)
表2.月別・住所地別インフルエンザウイルスAソ連型(AH1N1)検出状況(1991年11月〜1992年7月)
表3.月別・住所地別インフルエンザウイルスA香港(AH3N2)検出状況(1991年11月〜1992年7月)
表4.月別・住所地別インフルエンザウイルスB型検出状況(1991年11月〜1992年7月)
表5.年齢別インフルエンザウイルス検出状況(1991年11月〜1992年7月)
表6.1991/92インフルエンザシーズン中に分離された代表株の抗原分析(抜粋)





前へ 次へ
copyright
IASR