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Vol.14 (1993/2[156])

<国内情報>
秋田県における1976〜1991年度の感染症サーベイランス検査からみた分離A群レンサ球菌の菌型動向について


 秋田県では,1976年4月から患者情報と検査情報からなる感染症サーベイランス事業を実施してきたが,本県における猩紅熱の罹患率が全国的にみて極めて高率であったので,患者情報における溶連菌感染症の発生動向のみならず,検査情報におけるA群レンサ球菌の分離動向と菌型動向1,2)にも焦点の1つが当てられてきた。このことから,本報では,1992年3月までの16年間に分離されたA群レンサ球菌の菌型動向3,4) について概略報告する。

 この感染症サーベイランス検査ではこれまで43種類の疾病を対象として11,031名の患者について検査してきたが,A群レンサ球菌の検査が行われたのは,このうち42.1%に当たる4,648名についてであった。その結果,923株のA群レンサ球菌が分離された。最も高率に分離された疾患は猩紅熱(75.2%),次いで溶連菌感染症(53.1%)であった。

 923株中型不明(UT)株99株を除く824株は15種類の菌型(T型)に型別されたが,最も高率な菌型は12型(41.0%),次いで4型(22.7%),6型(10.6%),1型(7.8%),3型(5.2%),13型(2.9%),28型(2.9%),B3264型(2.4%)であった。逆に,最も低率な菌型は9型,18型,23型(それぞれ0.1%),次いで5/27/44型(0.2%),14/49型(0.8%),22型(1.3%),25型(1.7%)であった。

 これらの菌型のうち,12型からB3264型の8種類の菌型について,過去16年間における菌型分布率推移を全国と比較してみると,図1のごとくであった。すなわち,全国の場合は,1979〜90年の病原微生物検出情報から地研と保健所で分離したA群レンサ球菌の菌型を年次別に集計し,次いで当該年次における総分離株数(UT株を除く)に対する当該菌型分離株数の百分率を求め,これを菌型分布率とした。また,秋田の場合,年度別に同様に求めた。従って,全国は年次別,秋田は年度別の各菌型分布率ということになる。

 1型は,秋田では全国と同様に1980年代後半からやや増加する傾向を示し,1991年度には30.6%の高い分布率を示した。3型は,1983年から増加し始め,全国では1985年(29.8%)および秋田では1986年度(34.3%)にピークを示したが,その後は減少してきた。4型は,両者共ほぼ同傾向のパターンを示し,1981〜82年の谷底を経た後,漸増する傾向を示し,全国では1989年に32.9%および秋田では1990年度に42.9%のそれぞれ最も高い分布率を示した。6型は,全国では1984年の0.9%を谷としてその前後に約10%前後の緩やかな2つの山を形成したパターンを示したのに対して,秋田ではほぼ4年間隔にピークを形成するパターンを示し,特に1986〜88年度は3年連続して28.3〜37.1%の高い分布率を示した。

 一方,12型は,全国では1980年(47.8%)をピークとして以後漸減する傾向を示したが,秋田でも,4〜5年間隔にピーク(最高率は1980年度の74.6%)を形成したものの,全体としては,全国と同様に近年やや減少するような傾向を示した。13型は,秋田では1979年度から出現し,1981年度に10%のピークを形成した後,減少したが,全国でも1982年の12.2%のピークを形成した後減少し,1989〜90年にはわずか0.7%になった。28型は比較的変動幅が小さく,全国では4.4〜9.2%および秋田では0〜6.7%の範囲で終始した。B3264型は,全国では1980年の9.6%および秋田では1979年度の13.3%のピークを形成した後漸減し,横ばい状態のような傾向を示した。

 以上,主な菌型の動向について報告したが,秋田における1992年4〜12月の成績(わずか6株に過ぎなかったが,1型3株,4型2株,28型1株)を含めて要約すると,@これまで菌型分布率の首位をほぼ占めてきた12型が近年やや減少傾向,Aこれに代わって,1型と4型が増加傾向,Bこれまでほぼ4年間隔でピークを示した6型が谷底期を低迷,Cかつて一時期急増した3型と13型は散発的,ということになるであろう。



 文献

1)森田ら:感染症誌,59,877,1985

2)森田ら:感染症誌,61,537,1987

3)森田ら:レンサ球菌感染症研究会第25回学術講演会抄録,p.1,1992,東京

4)森田ら:感染症誌,投稿準備中,1993



秋田県衛生科学研究所 森田 盛大,遠藤 守保,斉藤 志保子,八柳 潤
秋田県大館保健所 山脇 徳美


図1.主要菌型分布率の年次(全国)別・年度(秋田)別推移





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