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Vol.14 (1993/5[159])

<国内情報>
東京都内で1985〜1992年に市販された輸入および国産ナチュラルチーズのL.monocytogenes汚染状況


 東京都では都内で市販されている輸入および国産ナチュラルチーズのListeria monocytogenes汚染状況を1985年から継続調査しているので,その結果について概略を報告する。

 調査対象は1985〜1992年に都内で市販された輸入ナチュラルチーズ1,142例,国産ナチュラルチーズ630例である。1985〜1988年は原則として厚生省が通知した方法およびIDF法でL.monocytogenesを,1989〜1992年はIDF法に基づいて他のListeria属菌も含めて検査した。なお,IDF法は,EB培地で30℃,2日および7日間増菌培養後,Oxford培地平板を用いて分離培養する方法である。

 1985〜1992年に検査した輸入ナチュラルチーズ1,142例中30例(2.6%)からL.monocytogenesが検出された。検出されたチーズのタイプ別では,ソフト・セミソフトタイプが17例であり,内訳は,白カビタイプ4例,ウォッシュタイプ11例,その他のソフトタイプ2例であった。ハード・セミハードタイプでは13例からL.monocytogenesが検出され,そのうちの9例は,1992年に輸入ナチュラルチーズを東京都内の2工場で加工したピザ用ミックスチーズであり,他は青カビタイプ2例,ウォッシュタイプ2例であった。ピザ用ミックスチーズを除く,これら21例のチーズの原産国は,フランス18例,オランダ1例,ドイツ1例,イタリア1例であった。国産ナチュラルチーズは630例検査したが,L.monocytogenesは検出されなかった(表1)。なお,1989〜1992年の検査により,輸入ナチュラルチーズ498例中13例からL.innocuaが検出された。国産ナチュラルチーズ512件からはListeria属菌はすべて検出されなかった。

 1985〜1992年にナチュラルチーズから分離されたL.monocytogenes30株の血清型は,1/2a,1/2b,1/2c,4bの4種類であった。一連のピザ用ミックスチーズ汚染由来の9株は,すべて1/2bであった(表2)。

 1988年に厚生省は通牒「ソフト及びセミソフトタイプのナチュラルチーズのリステリア菌汚染防止について」を各地方自治体に示し,輸入チーズの本菌汚染に対する監視,指導の強化を指示した。これ以降,輸出国の汚染防止対策の整備と相まってソフト・セミソフトタイプチーズの本菌による汚染は減少している。しかし,ナチュラルチーズは欧米で食品由来リステリア症の原因食品として数多く報告されており,今回の調査からも,臨床由来株から高頻度に分離される1/2a,1/2b,4b型が分離される割合が高かったことから,本菌の汚染実態調査は今後とも継続する必要がある。さらに,昨年の一連のピザ用ミックスチーズ汚染では,検出された株の血清型がすべて1/2bであったこと,また,その後の調査で加工工場の拭き取り検体からもL.monocytogenesが検出され,これらも同じ血清型であったことから,工場での二次汚染も考えられ,今後,加工施設での二次汚染防止対策が重要と思われた。



東京都立衛生研究所 仲真 晶子,梅木 富士郎,飯田 孝,伊藤 武


表1.ナチュラルチーズからのListeria monocytogenesの検出状況(1985−1992年)
表2.ナチュラルチーズから分離されたListeria monocytogenesの血清型(1985−1992年)





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