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Vol.14 (1993/5[159])

<国内情報>
コクサッキーウイルスB4型による無菌性髄膜炎の流行について−岐阜県


 無菌性髄膜炎(AM)患者からのコクサッキーウイルスB4型(CB4)の分離は,岐阜県では1983年から毎年確認されていた。1985年には17人と比較的多くの患者からCB4が分離されたが,例年1〜2名のこの型による患者がみられたので,常在性ウイルスとしてたいして重きをおいていなかった。しかし,1992年に69人のAM患者からCB4が分離されたのは1983年以降初めてであり,岐阜県近隣県でのこのウイルス型によるAMの流行の報告も確認されないので,流行の概要を報告する。

 CB4の分離の始まりは,1992年2月19日西濃地区AM患者(6歳,男)の髄液から,続いて3月11日同地区のAM患者(8歳,男)髄液からCB4が分離された。表1に示したように5月2名,6月10名,7月25名,8月12名,9月6名,10月8名,11月3名からCB4の分離が継続し,12月の1名を最後にやっとCB4は分離されなくなった。

 1992年に検査したAM患者は合計108名で,そのうちウイルスが分離されたのは73名(67.6%)であった。ウイルス分離者のうち69名(94.5%)はCB4単独感染者であったが,2名はCB4とエコーウイルス6型(E6)の混合感染であった。混合感染の1名は,咽頭拭い液と髄液からE6が分離され,糞便からはCB4が分離された。もう1名は咽頭拭い液からCB4が分離され,髄液からはウイルスは分離されず,糞便からE6が分離された。前者はE6によるAMと推定されたが,後者はCB4とE6のいずれかが病因ウイルスであったか決定することが困難であった。ポリオウイルス2型(P2)が分離されたAM患者(6歳,女)は,1992年にはワクチン投与は受けておらず,地域のポリオワクチン投与は4月3日〜9日に実施されていた。髄液からP2が分離されたのはまれなことであった。国立予防衛生研究所で検査した結果,ワクチン由来株であることが明らかとなった。1月に糞便からアデノウイルス5型(Ad5)が分離されたAM患者(4歳,男)の咽頭拭い液・髄液からは,ウイルスは分離できなかった。

 検査したAM患者の発生地区は,岐阜を西濃・岐阜・中濃・東濃・飛騨地区の5地区に分けると,西濃地区(56名),中濃地区(20名),飛騨地区(15名),岐阜地区(11名),東濃地区(4名),県外(2名)であった。西濃地区からはCB4,CB4とE6の混合,Ad5が分離され,飛騨地区からはCB4とP2が分離され,その他の3地区からはCB4のみが分離された。

 患者の年齢は0歳から15歳に分布していたが,4〜6歳が60人(55.6%)と約半数を占めていた。CB4は0歳から14歳のAM患者から分離された。

 検体別ウイルス分離状況は,咽頭拭い液32検体中25株(78.1%),うち24株がCB4で1株はE6であった。髄液108検体中64株(59.3%),うち62株はCB4で,1株がE6,もう1株はP2であった。糞便28検体中24株(85.7%)が分離され,22株がCB4,1株がE6,もう1株はAd5であった。

 1992年岐阜県におけるAMの病原ウイルスとしては,CB4,E6とP2であったことが明らかとなったが,AM流行の主病原ウイルスはCB4であったことが確認できた。

 ここではCB4によるAMについてのみ記したが,CB4は手足口病・ヘルパンギーナ・その他疾患患者24名からも分離されており,岐阜県内でかなり広い地域に流行があったと推定された。



岐阜県保健環境研究所 三輪 智惠子


表1.無菌性髄膜炎月別患者発生状況(1992)





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