HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.14 (1993/5[159])

<外国情報>
肝蛭症(Fascioliasis)


 過去30年間の本虫の人体感染例は表1のようにヨーロッパ,アフリカ,ラテンアメリカ,アジア,西太平洋の約40カ国から1.5万人以上の感染者が報告されている。これらの多くは寄生虫学的診断法(糞便や胆汁からの虫卵検出,あるいは外科的または剖検による成虫発見)によっており,次いで血清学的診断,肝臓の病理切片,成虫の存在を示す超音波診断が行われている。これらの報告はたとえばボリビアやエジプト,フランス,イラン・イスラム共和国,ペルー,ポルトガル,プエルトリコのように2,3のコミュニティーを基盤にした調査,あるいは疫学的調査で多くの感染者を見出しているが,アジアの国では通常患者を対象にして診断がなされ,イラン・イスラム共和国は別として,多くはコミュニティーを基にした調査は行われていない。

 肝蛭の人体への感染は中間宿主と保虫宿主の存在,人の食習慣によって決まる。まず気候条件は中間宿主のLymnaea貝と虫の両者の発育にとって重要である。貝は高温に比べて低温に強い。アフリカの砂漠のような高温,低湿の土地での報告はない。その点年間雨量の多いフランスのような土地では多くの人体感染例を見る。保虫動物,主として山羊や羊,牛は人体への伝播を促進させる。人の食習慣は本症発生におおいに関係がある。ミズタガラシやその他の水棲の野菜が被嚢幼虫の媒介者としての役割を演じている。駆虫剤のビチオノールは治療期間が比較的長いものの,選択された駆虫剤であると考えられる。

(WHO,WER,67,No.44,326,1992)



Table 1. List of countries in which fascioliasis has been diagnosed in the last 30 years, by WHO Region





前へ 次へ
copyright
IASR