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Vol.14 (1993/5[159])

<外国情報>
ペストと誤診されたCapnocytophaga canimorsus敗血症,1992−米国・ニューメキシコ


 1961年以来,Capnocytophaga canimorsus(グラム陰性菌)のヒト分離株200がCDCに送付され,同定された。本菌の感染による症状は自己限局蜂巣炎から致死的敗血症と広範囲に及ぶ。大部分の致死的感染は脾欠損傷,アルコール中毒または悪性血液病等の病歴をもつ人に発生する。ほとんどの事例では感染は咬傷などイヌへの暴露によって起こる。本報告は最初ペストと誤診された1致死的事例のニューメキシコ当局およびCDCによる調査の要約である。

 1992年6月4日,50歳の男性が上腹部痛,吐気,発熱,悪寒および発疹症状を呈し,5日には直腸出血し緊急入院した。グラム陰性桿菌敗血症および腸間膜腸硬塞による播種性血管内血液凝固(DIC)と推定診断され,輸液,静脈内抗生物質治療および実験的抗エンドトキシン単クローン抗体治療が行われた。5日の調査開腹では正常であったが,急性の腎不全および急性呼吸困難症状にいたり,7日死亡した。

 検死解剖ではグラム陰性敗血症による広汎性内部出血性硬化がみられた。免疫不全による基礎疾患はない。敗血症性ペスト(ペスト菌による敗血症)が疑われ,抗ペスト菌血球凝集素価は2,048倍(正常価<16)であったが,バフィコートのペスト免疫蛍光抗体(IFA)および剖検材料の確認テストは陰性であった。入院時の血液培養からグラム陰性桿菌が分離され,C.canimorsusと同定された。

 この患者は5月2日に家の付近の山にハイキングしたが,虫や動物に咬まれていない。数匹の犬を飼っており,アルコール飲料を日に4〜6本飲んでいた。家族の話によると,入院時に親指が感染を起こしていたらしいが,検死記録では親指の感染はみとめられなかった。肺ペストの疑いがあったため,15人の病院職員が1週間ペストの予防治療を受けた。患者の飼犬や彼がハイキングに行った山のげっ歯類からペストに感染したノミは見出されなかった。

(CDC,MMWR,42,No.4,72,1993)






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