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1993年4月23日,大宮赤十字病院から,コレラ菌の疑いのある菌の同定依頼があった。患者は,埼玉県浦和市に在住の男性で年齢55歳,1993年4月8日〜20日までインドに出張し,帰国後の20日に水様性の下痢が6〜7回あった。腹痛,嘔吐,吐き気は無かった。既往歴として,12年前から糖尿病があり,インスリンを使用していた。
同定の結果,行政上の処置を必要とするVibrio cholerae,O1ではなかったが,コレラトキシン(CT)の産生が確認された。そこで,1993年4月27日,国立予防衛生研究所細菌部腸管系細菌室に血清型の確認を依頼したところ,現在インドおよびバングラデシュで流行が確認されているV.cholerae,non O1の新しい血清型O139であることが判明した。従来のV.cholerae,non O1は散発性の下痢症や腸管外感染症の原因となっていたが,この型はV.cholerae,O1同様コレラトキシンを産生し,大規模な集団発生を引き起こしていることから,この新しい血清型に対する監視を強化する必要があると思われる。
埼玉県衛生研究所 倉園 貴至,山田 文也,山口 正則,大関 瑤子,奥山 雄介
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