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Vol.14 (1993/7[161])

<外国情報>
1993年に米国の南西部で発生した急性疾患


 1993年5月から,発熱,筋肉痛,頭痛,咳に続いて急性呼吸不全を起こす症例が,ニューメキシコ,アリゾナ,コロラド,ユタ州で発生している。現在までの調査ではハンタウイルスの関与が示唆されている。

 CDCでは暫定的な診断基準を,1)低酸素血症(動脈の酸素飽和が90%未満)を伴う説明のつかない両側性の肺の間質浸潤のレントゲン像,あるいは,2)1993年に発生した説明のつかない心原性でない肺水腫の剖検の知見と定めた。6月7日までに24例確認された。患者発生は92年12月から始まっており,93年5月が最も多く(14例),最新例は6月1日に発症している。居住地はニューメキシコが17例,アリゾナが5例,他1例ずつである。平均年齢は34歳,13例が男性である。14例がアメリカインディアン,9例が白人,1例がスペイン系である。死亡率は50%である。

 臨床・剖検材料を分析したところ,9例中2例のペア血清,4例のシングル血清にハンタウイルスに対する抗体の上昇を認めた。ハンタウイルスの4つの血清型に対する交差反応パターンからみて,本疾患は同ウイルスの未知の血清型によるものと考えられる。

 ハンタウイルスは,ユーラシア大陸各地で腎炎症状を伴う出血熱を起こす病原体として知られ,韓国出血熱が有名である。自然宿主は齧歯類で,その乾燥排泄物からヒトへ飛沫感染する。ヒトからヒトへの感染は知られていない。これまで米国ではハンタウイルスによる疾患は報告されておらず,また腎臓ではなく肺が侵される点で,今回の疾患の病態は従来のハンタウイルスによるものと異なる。

 現在,病因,感染源,感染ルート,予防・制圧の手段を明らかにするべく,疫学,実験室,環境調査が進められている。患者発生地域への旅行制限はないが,齧歯類との接触を避けるべきである。治療に関しては,急性期初期のリバビリン静注が有効であったという報告がある。

(CDC,MMWR,42,No.22,421,1993)






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