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近年,Chlamydia pneumoniae(C.pn)は小児の呼吸器感染症の起因菌として注目されている。しかし,病原体の分離を実施している機関が限られているため,疫学情報面では不明な点が多い。
そこで,呼吸器疾患の疑いで病院を受診した小児を対象にC.pnの抗体検査および本菌の分離を行ったので報告する。
検査材料は1991年1月〜1992年12月の期間に呼吸器疾患の疑いで県内の公立病院2カ所で受診し,採取された小児の血清95検体および咽頭ぬぐい液84検体を用いた。
被検血清のIgGおよびIgMは間接蛍光抗体法(Micro−IF法)により測定した。クラミジアの分離培養は,HL細胞を用いた遠心吸着法(1,500rpm,20℃,60min)で3代まで継代し,確認同定検査を行った。
0〜11歳の呼吸器患者95検体の血清抗体検査を実施したところ,18検体(18.9%)からC.pnに対する特異抗体が検出された。また,抗体価は16倍から2,560倍の範囲に検出されたが,現在の感染指標とみなされているIgG抗体価が128倍以上の高い値を示した検体は18検体中9検体(50%)存在した。一方,IgM抗体は2検体から検出された。
C.pn抗体が検出された患者は喘息性気管支炎,急性気管支炎,上気道炎,肺炎などと臨床診断されており,発熱が38.0〜40.0℃認められた。
また,小児の咽頭ぬぐい液を細胞培養したところ,84検体中1検体の3代目培養からC.pnが分離された。この小児は2歳7カ月の女子で,1992年9月16日頃鼻汁が出現,19日から咳嗽がみられ,22日に県立S病院を受診した。その時の所見は呼吸音正常,咽喉部に発赤が見られ,頸部リンパ節に軽度の圧痛が認められたが発熱はなかった。7日間のエリスロマイシン投与(500mg/日)で症状が消失し,回復した。この小児と同居していた両親に特別異常はなかったが,姉(4歳7カ月)は9月16日以前に激しい咳嗽があったという。しかし,この姉からクラミジアは分離されなかった。
分離株の性状について検討したところ,封入体はカルチャーセット(Ortho):(+),マイクロトラック(Syva):(−),ギムザ染色:(+),クラミジア・セル(Cellabs Pty):(+)であったことから,C.pnと同定された。
以上の結果,C.pnは小児呼吸器疾患の病原体として小児期から広く侵淫していることが示唆され,きわめて重要であると考えられた。また,マイコプラズマやウイルスなどによっても類似症状を呈することが多いのでこれらを幅広く検索し,正確に診断することが必要である。
静岡県衛生環境センター 微生物ウイルス・スタッフ
秋山 眞人,神田 隆,杉枝 正明,長岡 宏美
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