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Vol.14 (1993/8[162])

<特集>
陰部クラミジア 1990〜1992


 厚生省感染症サーベイランスによる陰部クラミジア感染症の患者発生は季節変動は少なく,1987年にSTD定点からの情報収集が開始されて以来年間患者数は増加が続いている。1992年には淋病様疾患が大きく減少したため,陰部クラミジア感染症サーベイランス対象の5つの性感染症のトップとなった(表1)。1987〜89年の動向についてはすでに解析した (本月報Vol.11,No.9,1990)。 本特集は1990〜92年の3年間のまとめである。

 陰部クラミジア感染症患者の定点当たりの性・年齢別発生状況をみると,男は25〜29歳,女は20〜24歳がピークで,女ではこの年齢群における患者数の増加が著しい。性比(男:女)はどの年齢群においても年を追って減少しているが,10代<20代<30代<40代と高くなる傾向は変わらない(表2)。

 陰部クラミジア感染症の対淋病様疾患比を1987〜92年の6年間でみると,男性では1.0以下の横ばいで,1992年に淋病様疾患が大きく減少したためほぼ1.0となった。これに対し,女性では1987年に1.5であったのが1992年には4.3と目立って大きく増加している(図1)。

 病原微生物検出情報では感染症サーベイランスとは別に協力医療機関から検査材料別の病原菌検出情報を収集している(性・年齢別は不明)が,1992年の陰部尿道頸管擦過(分泌)物からのChlamydia trachomatisの検出報告数は1990年の1.75倍に増加し,対淋菌比も増加している(表3)。

 1990〜92年の3年間に11地研と1国立病院から1,003のクラミジア検出例の個別情報が報告された。検体の種類は陰部由来材料が922と最も多く,次いで陰部と尿の両方からが31,尿29である。陰部クラミジア以外は眼ぬぐい液16,鼻咽喉材料5である。

 陰部および尿からクラミジアが検出された982中936(95%)がサーベイランス定点で採取された材料からの検出である。検出方法は499が蛍光抗体法で,280が細胞培養,249が酵素抗体法である(表4)。1991年以降,男性の尿中のクラミジア抗原を酵素抗体法で直接検出した成績が報告されるようになった。

 臨床診断名をみると(表5),男では陰部クラミジア感染症,非淋菌性尿道炎,淋病様疾患,女では陰部クラミジア感染症が主である。また,年齢分布は,全例が15歳以上で,男女とも20代が最も多く,次いで30代,40代,10代の順である(図2)。性比(男:女)は全体で2.0,泌尿生殖器疾患の有症者に限ると2.5であった。

 眼ぬぐい液からの検出例はサーベイランス眼科定点の患者(クラミジア眼疾患12,流行性角結膜炎2,結膜炎2)から報告された。患者の年齢は18〜64歳でC.trachomatis14と種未同定2であった。

 鼻咽喉材料からの検出例は1〜2歳の肺炎患者4,0歳の乳児嘔吐下痢症患者1から報告された。クラミジア種は未同定である。

 1989年にクラミジアの新しい種C.pneumoniaeが報告され,肺炎の病原として注目されている(本号3〜4ページ参照。)



表1.年別性感染症患者発生状況,1990〜1992年(厚生省感染症サーベイランス情報)
表2.性・年齢別陰部クラミジア感染症患者発生状況,1990〜1992年(厚生省感染症サーベイランス情報)
図1.陰部クラミジア感染症,淋病様疾患患者性別発生状況,1987〜1992年(厚生省感染症サーベイランス情報)
表3.医療機関で陰部尿道頸管擦過(分泌)物から検出されたトラコマチス,淋菌報告数1990〜1992年
表4.陰部クラミジアの検出方法,1990〜1992年
表5.陰部クラミジア検出例*の臨床診断名 1990〜1992年
図2.陰部クラミジア検出例*の性・年齢分布1990〜1992年





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