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ワクチン接種歴のある,海外渡航歴のない2名がCorynebacterium diphtheriaeに感染したとの報告があった。
14歳のコーカサス人の女性は,咽頭症状で開業医を受診し,ペニシリンを投与されたが効果がなく,3週後に再受診した。咽頭材料からで毒素産生性のC.diphtheriae var mitisが検出された。クラリスロマイシンで症状,菌検出とも陰性となった。接触者の鼻咽頭材料からの菌検出はすべて陰性であった。国内感染事例としては1985年以来である。
18歳のコーカサス人の女性は,咽頭症状と発熱で開業医を受診した。咽頭材料からC.diphtheriae var gravisが検出された。当初本菌は毒素産生性とみなされ,患者はジフテリア抗毒素の治療を受け完治した。その後レファレンスセンターで検査の結果,本菌は毒素非産生性であることが判明した。接触者の菌検出はすべて陰性であった。
ジフテリアの流行を防ぐために,患者との接触者にはワクチン歴に従ってワクチン接種の実施,菌検出,予防内服等の措置を行う。
1940年には4万人以上あった英国のジフテリア発生数は,ワクチン導入により1957年には37に減少し,1986〜1992年の患者数は皮膚ジフテリアの輸入例を含めて21であった。一方,毒素非産生性のC.diphtheriae var gravisの検出は,1990年には10,1992年には50と増加している。これらのほとんどは子供や若年層の咽頭炎から分離された。
(CDSC,CDR,3,No.33,149,1993)
(WHO,WER,68,No.41,301,1993)
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