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Vol.15 (1994/1[167])

<国内情報>
STp遺伝子をもつ毒素原性大腸菌O169:H41による食中毒について−福岡市


 1991年から大阪府,鹿児島県,埼玉県,北九州市等,各地でO169:H41の毒素原性大腸菌(ETEC)による食中毒が多発しており,しかもそれらの大半は大規模の食中毒事例となっている。福岡市でも,1993年7月〜8月にかけて発生した2事例のETEC(O169:H41)による食中毒患者を検査したところ,いずれもSTp(STA1)遺伝子をもつETECであることが判明したので紹介する。

 2事例とも県外(佐賀県および北海道)の施設で発生したものであるため,原因食等の詳細は把握していないが,推定原因施設はいずれも旅館またはホテルであった。患者数は,佐賀県発生分が100数名,北海道発生分が30数名ということであった。

 当市においては,佐賀県の7名分と北海道の8名分の患者便について検査を行ったところ,ETEC(O169:H41)は,佐賀県分では7名中5名から,北海道分では8名中7名から検出された。

 ETECのST産生確認は,デンカ生研のコリストEIAにより,またST遺伝子の確認は島津製DNAプライマー(SThおよびSTp)によるPCR法で実施したが,両事例から分離された12株(1人1株)すべてが,STp(STA1)遺伝子のみをもつETECであった。

 また,これらの株について,AP150CHによる48種の糖分解および薬剤感受性試験(ABPC,CER,KM,GM,CP,TC,OL,NAの8薬剤)を実施した。その結果,いずれの株も糖分解性状は一致し,TCに耐性であり,菌株としての差異は認められなかった。

 STp遺伝子をもつETECは,当初,豚や牛の家畜から分離されており,本食中毒についてもこれら動物からの汚染の可能性が考えられる。



福岡市衛生試験所
樋脇 弘,本田 己喜子,椿本 亮,栗原 淑子,小田 隆弘,長沼 正昭





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