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Vol.15 (1994/1[167])

<国内情報>
CA24vによるAHCの流行−宮崎県


 宮崎市内の眼科定点より,1993年9月中旬頃から急性出血性結膜炎(AHC)の患者が高校生を中心に急増しているとの報告を受け,また,感染症サーベイランス情報より今回の流行が宮崎県に比較的限局されていることから,ウイルス分離を試み,現在までに28人の患者から25株のコクサッキーウイルスA24型変異株(CA24v)を分離したので報告する。

 材料は眼瞼結膜ぬぐい液とし,検体保存液には1%FCS加Eagle's MEMにペニシリン,ストレプトマイシンを1,000単位,1,000γ/mlの割合でそれぞれ加えたものを用いた。また,集められた検体は分離まで−80℃に保存し,細胞へはVortexで充分に攪拌して接種した。また,患者の協力が得られた15名からペア血清も同時に採取した。

 分離に使用した細胞は,過去の文献等からヒト系としてRD-18S,HEL,HeLa,HEp-2,サル系としてVero,GMK,BGM,MA104の計8種類を用いた。

 分離は96穴マイクロプレートを用いて検体を1wellあたり25μlずつ接種し,36℃40分吸着後,維持培地を100μlずつ加え1週間培養した。なお,培養に際してCO2インキュベーターの温度を33℃と36℃の2種類に設定し,並行して培養した。また,CPEが観察されたものはウイルスの変異等を考慮して継代を必要最小限とし,2代継代したものを種ウイルスとした。

 同定は国立予防衛生研究所の武田直和氏より分与いただいたEV70,CA24vの抗血清を用いて,常法通り中和試験で行った。これらの方法により早いものは3日目でエンテロウイルス特有のCPEが観察でき,同定の結果,全例CA24vであった。また,1週間以内に明瞭なCPEが確認できたものを指標として細胞感受性を比較すると,RD-18Sが最も感受性が良く,次いでHeLa,HELと続き,サル系の細胞には感受性が無かった。また,培養温度に関しては,36℃の方が33℃よりもCPEが早く観察された。検体の採取時期に関しては,今回1〜2病日のものがほとんどあったが,最高6病日の患者からも分離することができた。なお,ペア血清の得られた患者15人の中和抗体価は2週間以上間隔をおいたもの5件で有意な上昇を認めたが,1週間前後のもので有意差は認められず,従来から言われているように,表層感染における血清抗体価上昇の低さを物語っており,回復期血清入手の困難さを併せて考えるとCA24vのように比較的分離が容易な場合,分離同定の方がより現実的であると思われた。

 今回,宮崎県で流行したAHCを第40週サーベイランス情報の年齢別データでみると15〜19歳で大きなピークがあり,次いで40〜44歳となっている。これは家族内感染を示しているものと思われ,事実28検体中6件は親子または兄弟であった。さらに,流行の初期には高校生を中心としたものであったが,徐々に小,中学生にも広がる傾向がみられ,予防啓蒙の普及に一考の余地があるように思われた。なお,宮崎県でのAHCの流行はほぼ3年ぶりであり,なぜ宮崎県で流行したのかは不明である。また,今回のAHCでは臨床的に典型的なものが多かったが,CA24vが容易に分離されるため,アデノウイルス等の重複感染を見逃す恐れもあり,今後さらに検討する必要があるものと思われる。



宮崎県衛生環境研究所 吉野 修司,山本 正悟,大浦 恭子,川畑 紀彦
宮崎中央眼科病院   原田 一道





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