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家庭内で子供間にHIV伝播が起こった例が2例,米国で報告されている。
1例目は,別々のHIV-1感染者の母を持つ2名の子供の間での伝播である。2児は2歳から5歳まで同じ家に住んでいた。最初の児は出生時に母から感染した。2番目の児は,検査により3歳までは未感染であったことが確認されていた。2番目に感染した児のHIV-1 DNAは最初の児のものとほとんど同一で,その母や対照とした他の4名の垂直感染によるHIV感染児のものとは異なっていた。頻繁に出血していた最初の児から,開放創や粘膜を通して感染したと考えられる。
2例目は血友病の兄弟間でのHIV-1の伝播である。兄がまず,スクリーニングされていない第8因子によりHIVに感染し,1985年から抗体が陽性であった。弟は,スクリーニング,または加熱・モノクローナル抗体処理された第8因子の投与を受けていたため,1989年までは抗体陰性であった。しかし,1991年4月に抗体が陽転した。兄弟から分離されたHIV-1 DNAのgp120 V3領域の345塩基の配列はほとんど同一であった。兄弟間で1988年に一時カミソリを共用し,両者がその時にわずかに出血したことがある以外,輸液器具の共用や汚染血液への接触,性的接触の事実は確認されなかった。
これまで欧米で,家庭内接触によるHIV伝播について,17回,300名以上の児童を含む1,167人について調査が行われたが,性交あるいは針の共用なくして感染した例はない。今回のような事例の起こる頻度は極めて低いといえるが,HIV汚染血液による経皮や粘膜を通じての感染の危険性を考えると,注射器で血液を扱う家庭やヘルスケアの現場では注意が必要である。
(CDSC,CDR,3,52,237,1993
CDC,MMWR,42,49,948,1993)
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