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Vol.15 (1994/4[170])

<国内情報>
タイ旅行者からのVibrio cholerae O139分離−青森県


 大阪空港検疫所から青森県に2月22日のタイ国際航空便の乗客にコレラ患者が発生し,県内に4名の同乗者のいることが通報された。これらのうち黒石市在住の2名が軟便と下痢症状を呈していたことから,25日黒石保健所で2名の便を採取しコレラ菌検査を行ったところ,翌26日に1名(52歳,女性)のTCBS寒天平板培地にコレラ菌様の集落が純培養状に分離された。県環境保健センターで確認同定がなされ,分離菌はコレラ毒素(CT)産生性Vibrio cholerae O139と同定された。

 分離菌は国立予防衛生研究所から分与されたO139血清に凝集し,簡易同定キット(RAPID20E,bio Merieux SA)による4時間同定(コード5200457)およびapi 20 E(コード5147124)でV. choleraeの生化学的性状を示した。また,市販のプライマー(島津)を用いたPCR法により,TCBS寒天平板培地上の集落からCT遺伝子が検出され,CT産生性も市販のRPLAキット(デンカ生研)で確認された。

 患者は2月18日〜22日に家族らとタイを旅行し,帰国後夜行電車で23日に帰宅したが,24日の朝から3〜4回,25日にも3〜4回の下痢(水様便)症状を呈したため26日に市内病院で受診し抗生剤(ミノマイシン)の投与を受けた。本菌感染症は行政上コレラ扱いではないが,県はその強い感染性を考慮し,患者に対し外部との接触を最小限にするよう協力要請した。幸い患者は通院治療による経過も良く,2回目の便検査では本菌は分離されなかった(2月28日)。今回のV. cholerae O139はコレラ患者との航空機同乗者から偶発的に分離されたものであるが,今後行政等による監視の強化はもとより,一般医療機関などの検査体制が必要と思われる。なお,本症例は1993年の埼玉県,長野県,栃木県の散発例に次ぐ国内第4例目に当たる。



青森県環境保健センター 大友 良光,豊川 安延
黒石保健所 長利 徳興





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