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近年,Chlamydia pneumoniae(C. pn)は,呼吸器感染症の起因菌として注目を集めている。さらに最近になって,欧米ではC. pnと虚血性心疾患との関連についても注目を集めるようになってきた。そこで,我々は,Single PCR法,nested double PCR法,モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色と培養法を用いて,冠動脈アテローム病変からC. pnの検出を試みた。
検査材料として,90%以上の冠動脈狭窄病変を認めた16例(47〜75歳,男13人,女3人)に冠動脈アテレクトミーを行い,切除した動脈硬化病変切片を用いた。免疫組織染色には,認識するエピトープの異なる2種類のC. pn特異モノクローナル抗体(RR-402,Washington Research FoundationとYK-41由来53kDaの膜蛋白由来モノクローナル抗体,日立化成社)あるいはC. trachomatis種特異モノクローナル抗体(Virostat社)を一次抗体とし,ダコLSABキット(ダコ社)で染色した。PCR法は,Campbellらの報告したプライマーを用い,single PCR法と,nested double PCR法を行った。培養はKuoらの方法に準じてHEp-2 cellを用いて3継代まで行った。血清抗体価は,Wangらのmicro-IF法を用い,C. pnのIgG,IgM,IgA抗体価をそれぞれ測定した。なお,生後1日か5歳で死亡した10例の小児の冠動脈をアテローム病変のないコントロールとした。
冠動脈アテローム病変より,C. pn特異免疫組織染色,single PCR法と,nested double PCR法でそれぞれ15例中13例(87%),16例中8例(50%),16例中12例(75%)にC. pnが検出された。C. trachomatis種特異モノクローナル抗体による免疫組織染色では15例全例陰性であった。培養法は14例に行ったが,分離には成功しなかった。血清抗体価は,8例に行ったが,IgG抗体価は全例64倍以上,IgM抗体は全例陰性であり全例既感染パターンであった。IgA抗体は,2例のみ陽性であった(表1)。なお,コントロールの小児の冠動脈は,免疫組織染色とsingle PCR法ならびにnested double PCR法で全例陰性であり,C. pnを検出できなかった。
Kuoらは冠動脈アテローム病変からC. pnを検出している(PCRで43%,免疫組織染色で42%の陽性率)。今回の我々の検討では,Kuoらの報告よりもC. pnの検出率が高い。これは,Kuoらの報告で対象とされた症例が,南アフリカや米国の主に事故で亡くなった人を対象としているのに対し,今回の検討では虚血性心疾患患者を対象としたためとも考えられ,C. pnが冠動脈アテローム病変の増悪因子となっている可能性も考えられる。
高率に虚血性心疾患患者の冠動脈アテローム病変からC. pnが検出されるため,両者の強い関連が示唆された。今後両者の関連についてさらなる検討が必要と思われる。
済生会下関総合病院小児科 尾内 一信
同循環器内科 藤井 万葉
広島県保健環境センター 金本 康生
山口大学微生物学教室 中澤 晶子
表1.冠動脈アテローム病変からのC. pneumoniaeの検出状況と血清抗体価
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