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1993/94インフルエンザシーズンは,主にAH3型(B型は散発)が流行因子となり,流行の規模は小さかったが,ウイルス分離状況からみると,散布された期間は比較的長く,大阪府下においても,4月下旬までAH3型による散発が確認された。流行期も過ぎ,サーベイランス検査定点から,夏型感染症であるヘルパンギーナの検体送付の増加が認められる6月に入り,大阪府北部の検査定点病院から,週1〜2件「異型肺炎?,インフルエンザ様疾患?」「ヘルパンギーナ?,インフルエンザ様疾患?」「風疹?,インフルエンザ様疾患?」等,高熱(39℃以上)を伴い下気道炎,リンパ節腫脹等の臨床症状を示す患者のうがい液,鼻汁等が採取送付され,6月23日採取(6月24日受付)9歳(男),6月24日採取(6月27日受付)13歳(男)の2検体からインフルエンザAH1型ウイルスが分離された。
国内では,インフルエンザAH1型は1991/92シーズン以降,ウイルス分離,流行の報告はない。
分離されたウイルスは,最近の流行株であるA/山形/32/89(H1N1)とは抗原性が異なるという同定成績が得られた(予研インフルエンザセンターにおける確認成績も同じ)。そこで,分離株に対するフェレット感染免疫血清を作製し,1977年,インフルエンザAH1型出現以来の数株の抗血清と交差HI反応による抗原解析を行った。過去,流行因子としてAH1型は,1986年に比較的抗原変異のある株が出現し,代表株としてA/山形/120/86株から連続的にA/山形/32/89株に引き継がれているが,今回の分離株は1980年以前の株に交差が強く認められ,感染免疫血清側からみた抗原性も古い型により交差を示した(表)。
病原微生物検出情報(1994年7月号)によると,ヨーロッパ,アメリカにおいても日本のA/山形/32/89(H1N1)類似株があることから1994/95シーズンのワクチン株としてこの株が選定されたのであるが,今回のような抗原変異株の出現の報告はなく,感染ルートの推定は不可能である。
その後7月にも,ヘルパンギーナ由来の検体について,一部インフルエンザの分離を試みたが,結果は陰性であった。
さらに,1993/94シーズンに採血され,かつA/山形/32/89(H1N1)株に対する抗体を保有する血清50例について,分離株A/大阪/473/94をHA抗原とし,A/山形/32/89(H1N1)株と同時にHI抗体価を測定した。その結果を年齢別平均HI抗体価として図示した。分離株の抗原解析とよく一致し,14歳以上(1980年以前の生まれ)では,両抗原にほぼ同じ,ないしは分離株に高いHI価を示し,1980年以降の誕生者ではA/山形/32/89株に高いHI価を示す者が多かった。3歳以下(1歳未満)は3例あり,その抗体価は今回の分離株に対して高かったが,これは母親からの移行抗体と考えられる。従って,変異株とはいえ,A/山形/32/89株に対しては各年齢層において比較的高いHI抗体を保有する今日,低年齢層を除けば分離株に対する抗体保有はかなり認められると推察されるが,さらに秋にむけ,低年齢層を中心に監視を強める必要があると考えている。
大阪府立公衆衛生研究所
前田 章子,加瀬 哲男,奥野 良信
1994年分離インフルエンザAH1型抗原解析−大阪府−
年齢別平均HI抗体価
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