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Vol.15 (1994/9[175])

<国内情報>
コアグラーゼW型黄色ブドウ球菌による食中毒事例について−滋賀県


 本年(1994)年5月,彦根市内の事業所において発生した黄色ブドウ球菌としてはまれなコアグラーゼW型による食中毒事例の概要を報告する。

 本事例は,5月15日従業員組合主催による観劇ツアー参加者の中に,嘔吐,下痢等の食中毒様症状を呈する者が続出したことから,産業医をとおして保健所に通報されたものである。

 疫学調査の結果,患者はいずれも市内1弁当店調製のおにぎり弁当を喫食しており,他に共通食もないことから,この弁当店が原因施設と断定された。

 喫食者58名中患者は25名で,主な臨床症状は嘔吐(52%),下痢(68%),腹痛(20%),嘔気(64%)などであり,潜伏時間は0.75〜14時間(最頻時間2〜4時間,平均4.3時間)であった。

 原因菌検索の結果,患者12名中8名,従業員5名中2名の便からコアグラーゼW型黄色ブドウ球菌が検出された。

 また,弁当の残品おにぎり(梅干し,昆布,鮭)からそれぞれ107,107,109個/gのコアグラーゼW型黄色ブドウ球菌が検出され,これらが原因食品と特定された。

 これらの黄色ブドウ球菌はいずれもエンテロトキシンA産生菌であった。また,おにぎり中のエンテロトキシンAは,梅干し5ng/g,昆布8ng/g,鮭4ng/gであった。

 原因食のおにぎりは,前日の15時頃製造され,当日6時頃配達,7時頃〜8時頃にかけて喫食されたもので,製造から喫食までほぼ16時間室温に放置されていたものである。



長浜保健所 児玉 弘美,橋本 信代,安田 和彦
彦根保健所 大橋 久治,竹内 康郎,稲垣 佳史,北川 浩規
滋賀県立衛生環境センター 矢田 悦子,宮下 康雄





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