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Vol.15 (1994/9[175])

<国内情報>
肝毛頭虫Capillaria hepaticaの人体感染例


 肝毛頭虫Capillaria hepaticaはネズミの肝臓に汎世界的に見られる寄生線虫であるが,人体にも寄生し,時に致死的な疾病をおこす。文献的には世界各地から約40症例近くが報告されている(Choe et al.,1993その他)。本虫は肝実質に産卵するため,そのままでは卵は外界に出ることはできない。そのネズミが捕食・共食いされると,捕食者の糞便に混じて卵が外界に散布され,湿潤な環境下で感染幼虫を形成した卵が水や食物に混入して経口感染する。わが国でもネズミには本虫が普通に寄生しており,人体寄生例の発生する恐れがあったが,実際に最近2症例が相次いで報告された。これらの症例は比較的軽症であったが,今後重症例の発生することも予測されるので,肝に腫瘤が認められる場合に考慮すべきである。

 @26歳,男性,新潟県在住

 上腹部痛を訴え,胆石と診断され胆嚢切除を受ける。手術時に肝S4に径2cmの境界明瞭な腫瘤を認め切除。腫瘤は好酸球性肉芽腫で,内部から肝毛頭虫雌1虫が検出された。

(Sekikawa et al.,1991)

 A32歳,女性,沖縄県在住

 右季肋部痛を訴え,腹部エコーにて肝S6に腫瘤を指摘される。悪性腫瘍を疑い切除手術施行。腫瘤は径3.5×2.0cm,境界明瞭な好酸球性肉芽腫で,内部に肝毛頭1虫(雌と推定)が検出された。

(小波津ら,1994)

 文 献

Choe G. et al. (1993): Am. J. Trop. Med. Hyg., 48 (5): 610-625

小波津 寛ら(1994):肝腫瘤像を呈した肝毛頭虫症の1例。沖縄医学誌,32:(印刷中)

Sekikawa, H. et al. (1991): Jpn. J. Parasitol., 40 (6): 528-532



琉球大学医学部寄生中学教室 長谷川 英男





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