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1994年5月〜9月までにエンテロウイルス32株を分離した。分離ウイルスはEcho9(13株),CA10(7株),CBI(5株),Echo11(2株),Echo7株(2株),CA6,CB2,EV71各1株であった。これらのうちEcho9(E9)が分離された13名中11名が発疹性疾患の患児であった。
E9分離検体は13件中12件が兵庫県感染症サーベイランス事業の検査定点である県北部の公立豊岡病院で採取され,診断名は不明発疹性疾患が8名,突発性発疹1名,麻疹様疾患(発疹,上気道炎)1名,不明(発疹,上気道炎)1名および無菌性髄膜炎(AM)1名で,発病日は4月下旬〜7月上旬であった。不明発疹性疾患8名(男5,女3)の年齢は7ヵ月〜4歳(平均2.0 歳),同じく突発性発疹は6ヵ月女児,麻疹様疾患は1歳男児,AMは7歳男児であった。診断名不明の1名は,4歳女児で保育所での流行であった。発熱は7名で認められ,37.6〜39.7℃(平均38.8℃)であった。
ウイルスはすべてRD-18S細胞で分離され,一部はHeLa細胞でも分離された。RD-18S細胞への接種後2日以降でCPEを生じ,ほとんどの株は1代目で分離された。
兵庫県では,1993年8〜12月に県中部の一保健所管内に限局してAMが流行し,AM患者26名中21名からE9が分離された。E9分離の21名の平均年齢は5.1歳であったが,このうち5名では発疹も認められており,この5名の平均年齢は3.0歳で発疹発症児の低年齢傾向が認められた。これは今回のE9分離患児12名の平均年齢(2.8歳)と類似しており,E9の分離が発疹症患者から多かったのは,低年齢児での感染が多かったことが原因とも思われた。また,AM発症の1名の年齢は7歳で,発疹は認められなかった。
県西部地域からもE9が1株分離されており,今後も引き続きE9流行の可能性が考えられる。一方,公立豊岡病院からの検体で7月下旬発病の1歳女児(発疹)と8月上旬発病の2歳男児(AM)からエコーウイルス7型(E7)が分離されており,今後はE7の流行にも注意が必要と思われる。
兵庫県立衛生研究所 藤本 嗣人,近平 雅嗣,楠田 均
公立豊岡病院 吉田 真策
診断名別エンテロウイルス分離状況(1994年5月〜9月)
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