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東洋眼虫は,1910年に西パキスタンのパンジャブ産のイヌの瞬膜から発見されたのが最初で,通常はイヌ,ネコ,キツネなどの眼結膜面に寄生する。成虫はその寄生部位の眼結膜面で胎生卵を生み出し,それらの虫卵は涙液や眼脂などに混入する。そのような涙液や眼脂を本虫の中間宿主であるメマトイの仲間が嘗食する時,その消化管に取り込まれ,脱殻,発育し,約2週間後に感染幼虫となって吻近くに現れる。このようなメマトイが再び終宿主の眼部で涙液や眼脂を嘗食する時,結膜面に感染幼虫が放出され感染する。ヒトも同様の経過をとって感染する。
ヒトは感染すると激しい眼痛,流涙,結膜充血,眼瞼浮腫,視力障害,掻痒感,飛蚊症,眼球結膜の異物感,慢性結膜炎症候,眼脂が見られる。
わが国での人体症例は1957年萩原らにより第1例が報告されており,現在まで表1に示すように86症例が報告されているが,男女差はほとんど見られない(1:1.19)。しかし,年齢的には表2に見られるように9歳以下と70歳以上の若年層と老年層に多くの感染者を見るのは,ヒトの活動性と関連づけて興味がある。最低年齢は4ヵ月の女児,最高年齢は90歳の女性である。
地域的には表3に示すように神奈川県以西から報告され,特に北部九州において患者の多発を見る。
予研寄生動物部 影井 昇
表1 東洋眼虫症の年度別患者報告数
表2 東洋眼虫症の年令別患者報告数
表3 東洋眼虫症の地域別患者報告数
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