HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.15 (1994/10[176])

<外国情報>
1994年米国北東部で発生したハンタウイルス呼吸器症候群


1994年1月20日,ロードアイランドに住む22歳の男性が,入院後5時間で急性呼吸器不全のため死亡した。その後,CDCでMuerto Canyon virus(MCV,Sin Nombre virusへの名称変更が提案されている)の感染が確かめられ,ハンタウイルス呼吸器症候群(HPS)と診断された。患者がウイルスに暴露された場所としては,シェルターアイランドの別荘,ロングアイランドの実家を含め何ヵ所か考えられ,1993年12月には,ニューヨーク・クイーンズで過去10年間使われていなかった倉庫の掃除をしていた。

同様に暴露された可能性のある家族や同僚など64名の血清,および疑わしい場所で捕らえられた110匹のネズミの血清からは,ハンタウイルスに対する抗体は検出されなかった。

米国では,1994年7月28日までに83例のHPSが報告され,54%が死亡している。96%がミシシッピ川以西で発生している。MCVの宿主であるPeromyscus maniculatus (deer mouse) は,南東部と大西洋沿岸を除く米国全土に生息している。P. maniculatusの生息していない東テキサス,ルイジアナ,フロリダそしてロードアイランドで今までにHPSが1例ずつ見つかっており,フロリダで分離されたウイルス(Black Creek Canal virus)とMCV,およびルイジアナでPCRで検出されたウイルスは互いに異なっている。今回検出されたウイルスもMCVの変異株か,類似の新しいウイルスであることが示唆されている。

 HPSは初発症状が特異的でないため,早期診断が難しい。低酸素症の迅速な治療,輸液を過剰に投与しないこと,強心剤および昇圧剤を早くから用いることが特に重要である。抗ウイルス剤リバビリンには,著明な予後の改善効果は見られない。

(CDC,MMWR,43,30,548,1994)






前へ 次へ
copyright
IASR