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Vol.15 (1994/11[177])

<国内情報>
わが国における劇症型A群溶連菌感染症


 1992年7月20日〜1994年9月30日までに,全国23都道府県から東京都立衛生研究所に劇症型A群溶連菌感染症患者から分離されたA群レンサ球菌の発熱毒素(SPE)の産生性とT抗原型別の精査依頼が72菌株あった。これらの患者はこれまで提案されている劇症型A群溶連菌感染症の診断基準をほぼ満たしていた。

図1は月別の依頼検査菌株数を示したものである。1992年7月20日〜1993年9月30日までは9株であるが,1993年10月1日〜1994年9月30日までの1年間の依頼検査菌株数は63株(87.5%)であった。この1年間の月毎の依頼菌株数は3〜8菌株で平均5菌株であった。

 図2はA群レンサ球菌のSPE検出法およびT抗原型別法を示した。SPEの検出は当研究所で開発したラテックス凝集試験を用い,T抗原型別はT抗原型別用血清「デンカ生研(株)」を用いて行った。

 表1は72症例の劇症型A群溶連菌感染症患者の年齢,性別および転帰との関係をまとめたものである。劇症型A群溶連菌感染症患者は男性:48名(66.7%);女性:24名(33.3%)で,男女比は2:1であった。患者の年齢は0歳〜81歳で,年齢別の患者数は31〜70歳が50名(69.4%)であった。転帰についてみると死亡数が27名で,死亡率は37.5%であった。詳細な調査結果はないが,これらの患者の中には肝機能障害や糖尿病等の基礎疾患を有する患者が多く含まれていた。

 表2は劇症型A群溶連菌感染症患者から分離されたA群レンサ球菌のT抗原型とSPE型との関係をまとめたものである。T抗原型は12種類のT型に分けられた。菌株数の多い型の順に並べるとT3,T1,T28,T12,T22,T4,T11で,その菌株数はそれぞれ27,20,6,5,4,3,2株であった。それ以外のT型はそれぞれ1株であった。T1とT3の2つの菌型だけで47株で,全体の65.3%を占めていた。SPE型について菌株数の多い型の順に並べるとB+C,A,B,A+B,C,A+C,A+B+Cで,その菌株数はそれぞれ17,16,16,15,4,1,1株であった。2株はSPE非産生株であった。現在,劇症型A群溶連菌感染症の発病機序については全く不明である。

 今後,劇症型A群溶連菌感染症の発病機序解明のために,A群レンサ球菌の起病性因子の研究と同様に患者側の発病要因についても研究していく必要があると考えている。



東京都立衛生研究所微生物部
五十嵐 英夫,柏木 義勝,遠藤 美代子,奥野 ルミ


図1.劇症型A群溶連菌感染症検査依頼件数(月別)
図2.A群レンサ球菌の発熱毒素検出法およびT抗原型別法
表1.わが国の劇症型A群溶連菌感染症患者の年齢,性別および転帰との関連
表2.わが国の劇症型A群溶連菌感染症患者由来A群レンサ球菌のT型と毒素型
 わが国における劇症型A群溶連菌感染症の分布





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