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Vol.15 (1994/11[177])

<国内情報>
劇症型A群溶連菌感染症2症例−広島県


 1993年10月と1994年3月に広島県内で相次いでA群溶血レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)による成人の劇症型感染症の発生が認められた。2例とも血圧低下,ショック症状,血液凝固障害,急性呼吸窮迫症候群(ARDS),腎・肝障害および軟部組織の炎症,さらに炎症部の生検材料から本菌が分離検出されたことから,米国医師会の定めたトキシックショック様症候群(TSLS)診断基準を満たした。菌の分離検出は2例とも比較的早く,T型別を実施した後,他機関の協力を得て菌のM型別および産生される発熱毒素(SPE)の型が判明した。2症例の臨床経過ならびに菌の検索結果を次ページの表に示す。

 全国的には臨床経過が激烈な死亡例が報告されている中で,本症例が救命し得た要因として@入院初期から敗血症性ショックと診断し,強力に抗生剤,グロブリン製剤,アルブミン等を投与し,強力な抗播種性血管内凝固症候群(抗DIC)療法を施行したこと,A比較的早期に菌の同定が可能であったこと,B検査室および各科の積極的な協力が得られ集中治療体制で対応できたこと,C投与したCLDMが菌体毒素を抑えるのに効果があったことなどが考えられた。その後,医師会や感染症懇話会等の機会を借りて本症の啓蒙に力を入れている。今後とも,病態の解明に向けレンサ球菌の疫学調査を続けて行きたい(詳細については平成6年度,レンサ球菌感染症研究会総会で発表した)。



広島県保健環境センター
広島鉄道病院
広島市立安佐市民病院


表 症例概況





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