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Vol.15 (1994/11[177])

<国内情報>
エコーウイルス9型による無菌性髄膜炎の流行−鳥取県


 鳥取県は生活経済圏により,東部,中部,西部の3地区に大きく分けられる。

 1994年6月下旬〜9月下旬に米子市を中心とした西部地域で無菌性髄膜炎(AM)の小規模流行を認め,この期間中に感染症サーベイランスの2定点からAM患者69人(咽頭ぬぐい液,便,髄液などの228検体)の検査材料を得た。分離依頼患者数は,6月5人,7月で最も多く36人,8月24人,9月4人であった。また年齢分布は,0歳が多く全体の15%(10/69名)を占め(そのうち1カ月未満児4名),4〜5歳で25%(17/69名)であった。

 ウイルス分離は,FL,RD-18S,Vero細胞により行い,その結果を表1に示した。分離率は36/69(52%)でエコーウイルス9型(E9)が最も多く25名から検出された。E9はRD-18Sに最も感受性があり,初代接種後3,4日目からCPEを示した。同定は,国立予研分与のエンテロウイルスプール抗血清と単味抗血清を用いて行った。表2に地区別のE9の分離状況を示した。西部地区の25株はすべてAM患者からの分離であるが,東部,中部地区の6株のうち5株は上気道炎に発疹を伴ったもの(手足口病様,風疹様など)からの分離であり,臨床診断名および症状に違いがみられた。

 鳥取県においてE9の流行は1990年(中部地区),91年(西部地区)にみられ,93年に西部地区のAM患者から流行閑期の10,12月に各1株検出されており,94年の西部地区での流行となったと思われる。このように過去の流行形態からみても全県に広がることなく限局的な小,中規模の流行形態が特徴とも考えられた。



鳥取県衛生研究所微生物科
川本 歩,戎谷 佐知子,木村 優子,本田 達之助


表1.無菌性髄膜炎患者からのウイルス分離結果
表2.地区別Echo9型ウイルス分離状況





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