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Vol.15 (1994/12[178])

<国内情報>
流行閑期に沖縄県で分離されたインフルエンザB型ウイルス


 沖縄県におけるインフルエンザ様疾患の集団発生による流行は,1992/93シーズンでは,1992年11〜93年3月にかけA香港(H3N2)型とB型の混合流行で,患者数,ウイルス検出数ともに増加し大きな流行であった。1993/94シーズンでは,患者の報告が少なく(1月に2件のみ),ウイルスも検出されず,インフルエンザは終息したものと思われた。ところが,1994年5月〜7月にかけてインフルエンザ様症状を呈した散発患者からインフルエンザB型ウイルスが分離された。

 そこで,今回,流行閑期に分離されたインフルエンザB型ウイルスについて報告する。

 供試材料は,1994年5月〜7月にかけて沖縄県南部の2医療定点(小児科,内科)において臨床的にインフルエンザ様症状を呈した外来患者(散発患者)から採取された咽頭ぬぐい液とうがい液を検査に供した。咽頭ぬぐい液は小児科で,うがい液は内科(医院)で採取したものである。

 供試材料は,定法に従い処理した後MDCK細胞に接種し,ウイルス分離を試みた。分離ウイルスの抗原分析には,予研ウイルス第一部呼吸器系ウイルス室・日本インフルエンザウイルスセンター(以下インフルエンザセンター)から配布された1993/94シーズンの標準感染免疫血清を用いた。さらに,インフルエンザセンターにより詳細な抗原分析を依頼した。

 結果は,5月に2名(11名中),6月に6名(17名中),7月に1名(6名中)の計9名からウイルスが9株分離された。分離ウイルス9株の抗原分析では,B型の標準感染免疫血清B/三重/1/93に対して1:1,024〜1:2,048(ホモHI価:2,048),B/バンコク/163/90に対して1:128〜1:512(ホモHI価:2,048)の高いHI価を示し,A型の標準感染免疫血清に対しては,大半が1:<16(ホモHI価:2,048)を示したことから,分離株はすべてB型ウイルスと判明した(表1)。インフルエンザセンターに依頼した,分離株の抗原分析による成績は,6タイプのB型フェレット感染免疫血清のうち,B/三重/1/93に対して1:256〜1:1,024(ホモHI価:512)の高いHI価を示した(表2)。以上より,今回分離されたウイルスは,1994/95シーズンのワクチン株であるB型のB/三重/1/93に極めて類似していた。

 流行閑期に分離されたウイルス株が,次期シーズンの流行株になる可能性が非常に高いと思われる。また,1993年度の沖縄県下のインフルエンザ流行予測調査では,B/三重/1/93に対する県民の抗体保有率が低く,1994/95シーズンは,B型の流行が予想される。今後の動向に注目して流行予測事業等の調査を進める必要があると思われた。



沖縄県衛生環境研究所 大野 惇,糸数 清正,徳村 勝昌
沖縄県立那覇病院 安慶田 英樹
古波倉医院 古波倉 正照


表1.分離ウイルスの抗原分析(沖縄県)
表2.分離ウイルスの抗原分析(インフルエンザセンター)





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