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米国で最近診断されたヒト狂犬病症例の多くは外国で感染し,かつ明確な動物による咬傷を持たない。
1994年6月21日,40歳男性がマイアミの病院で亜急性,進行性の神経症状のため死亡した。生前,臨床的に診断がつかず,死後狂犬病と診断された。患者は1979〜93年にしばしばハイチを訪問し,93年はほとんどハイチで過ごした後,12月にマイアミへ戻った。1994年2月頃から頸部痛および頭痛が始まり,5月頃から増強,6月に悪寒,悪心,嘔吐により髄膜炎の疑いが持たれたが,髄液,ECGには特別異常はなかった。進行性の傾眠と見当識喪失のため入院した。神経障害が徐々に進行,人工呼吸にもかかわらず6月21日に死亡した。唾液流出過多は見られなかった。剖検では重度の脳脊髄炎所見があり,電顕でニューロンにウイルス粒子が検出され,蛍光抗体法で狂犬病が疑われた。RT-PCR法によりハイチのイヌ狂犬病ウイルスと99%のホモロジーを示した。この株は米国では検出されていない。家族によると,患者は動物と接触せず,咬まれたこともない。しかし,1993年後半〜1994年3月の間にハイチでウイルスに暴露されたのは明らかである。家族には暴露後の予防接種は行わなかったが,16名の病院スタッフには接種した。
この症例は,1980年以降米国で報告された20番目のヒト狂犬病症例である。このうち10例はおそらく米国外で感染し,14例は動物の咬傷が認められていない(この20例に暴露された結果,832名が予防接種を受け,このコストが850,000ドルであった)。ハイチや他の多くの発展途上国では依然としてイヌの狂犬病が問題である。これらの国々への旅行者はイヌや動物との接触を避け,少なくとも30日以上滞在する場合は予防接種をすべきである。
(CDC,MMWR,43,42,773,1994)
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