|
HIV感染関連疾病の理解および,HIV感染の診断法が向上してきたので,成人におけるAIDSサーベイランスのためのWHOの診断基準を見直す会議がジュネーブで開催された。その結果,次の点が勧告された。1985年の暫定的WHO臨床診断基準を修正してWHO AIDS診断基準とし,さらに,拡大WHO AIDS診断基準を導入する。これら二つの基準は,臨床および診断能力が限られた国の成人および青少年に適応される。
1.WHO診断基準
12歳以上の患者で次の主徴候のうち二つと,小徴候のうち少なくとも一つを呈し,HIV感染に無関係であることが判明していない場合,AIDS症例と判断する。
主徴候:10%以上の体重減少,1ヵ月以上の慢性下痢,1ヵ月以上にわたる発熱
小徴候:1ヵ月以上の持続的な咳(結核によることが明らかな場合は除外),全身性掻痒性皮膚炎,帯状疱疹,口腔カンジダ症,慢性進行性および播種性単純ヘルペス感染,全身性リンパ節炎
また,全身性カポジ肉腫やクリプトコッカス髄膜炎のどちらかが存在すればAIDS診断基準を満たす。この定義の長所は,HIV血清検査の必要がないため,簡明で,コストがかからないこと。限界は感度と特異性が低いことである。特に症状の似ているHIV陰性の結核患者を混同する可能性がある。
2.拡大WHO診断基準
12歳以上,HIV抗体陽性で,次の項目の一つ以上を有する時,AIDS症例と判断する。
10%以上の体重減少または悪液質(1ヵ月以上の下痢,発熱でHIVに無関係であることが判明していない場合),クリプトコッカス髄膜炎,肺および肺外性結核,カポジ肉腫,日常の活動に支障を来す神経障害でHIVに無関係であることが判明していない場合,食道のカンジダ症,再発性肺炎,侵襲性子宮頸癌
この拡大基準の大きな特徴は,HIV血清検査が必要で,さらに広い臨床所見を含んでいること。この拡大基準は簡明で,かつHIV血清検査を含んでいるため,特異性も高い。
これらWHO基準に対し,1993年改定のCDC AIDS基準やヨーロッパAIDS基準は,診断能力が高および中レベルの国にふさわしい。
(WHO,WER,69,37,273,1994)
|