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1961年に始まったエルトールコレラ菌による第7次コレラパンデミーは1994年も世界各地に拡大し続けた。1994年は384,403のコレラ事例がWHOに届け出され(1993年より2%の増加),1992年から減少傾向にあったものが再び上昇してきた。死亡例は10,692名で,致命率も1993年の1.8%から2.8%に上昇した。コレラ発生国は94で,これまでの最高を示した。
この年最も注目されたコレラの大流行が7月ザイールのゴマのルワンダ難民キャンプで発生した。また,アフガニスタン,ブラジル,ギニア,ギニアビサウおよびソマリアでも大きな流行がみられた。
アフリカ大陸でコレラ発生数が増加し,最大発生地域となった。アメリカ大陸では減少傾向が続き,致命率も1991年のラテンアメリカでのコレラ発生以来,最低を記録した。アジアでは1993年と比べ17%増加した。今まで輸入例のみであったヨーロッパでは国内発生数が著明に増加した。オセアニアでは6事例が報告されたが,うち5例は輸入例であり,死亡例もなかった。
コレラの新しい原因菌であるVibrio choleraeO139が1992年の終わりにインドで初めて発見されて以来,アジアの10カ国でその発生がみられているが,発生事例は減少傾向にあるようだ。
1994年各流行地で分離されたエルトールコレラ菌の抗生物質耐性菌の割合は増加しており,劇症コレラの脱水症状の治療時によく用いられるテトラサイクリン,ST合剤,エリスロマイシンに対する耐性菌が多くの地域で報告されている。
(WHO,WER,70,No.28,201,1995)
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