HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.16 (1995/11[189])

<特集>
手足口病 1994


Vol.16 No.11(No.189)1995年11月発行



 手足口病は,夏から秋にかけて乳幼児・小児に流行する軽症の急性発疹性疾患で,手のひら,足の裏,口腔粘膜に水疱を形成するのが特徴である。原因ウイルスはコクサッキーA群ウイルス16型(CA16),エンテロウイルス71型(EV71)で,さらにCA10,その他の型のCAによっても起こる。

 感染症サーベイランス情報によると,1994年の手足口病疾患者報告数は例年通り6月第2週から増加し始め,7月第3週にピークを示した後,年末までゆるかやに減少を続けた(図1)。一定点医療機関当たりの年間患者報告数は全国では22.59人で,多かったのは北海道の37.02人,少なかったのは関東・甲信越の14.57人,東北の17.83人であった。1994年の流行は,近畿では前2年よりも大きかったが,他の地域では前年よりも小さかった。北海道では1993年と同様,7月と9月に二峰性のピークがみられた。

 1994年に病原微生物検出情報へ報告された手足口病の主な原因ウイルスの分離総数は,EV71が153,CA16が114,CA10が204であった。そのうち手足口病症例(診断名または症状に手足口病と記載されていたもの)からの分離は,EV71が121,CA16が89,CA10が44であった。(表1)。また,EV71分離例12例,CA16分離例1例,CA10分離例3例に髄膜炎,EV71分離例1例に脳・脊髄炎が報告された。このうち,EV71の7例とCA10の1例に手足口病と髄膜炎が報告されていた。

 各機関から報告された手足口病症例からのウイルス分離数を地域別,月別に図2にまとめた。1994年には東北,関東,甲信越ではEV71とCA16が,近畿,中国・四国ではCA10が分離された。中国・四国ではさらに秋から冬にかけてCA16が分離された。なお,各機関から病原微生物検出情報へ報告される手足口病症例からのウイルス分離数は,感染症サーベイランスによる当該地域の手足口病患者報告数を必ずしも反映するものではない。

 1992年〜94年に,手足口病症例でEV71,CA16が分離された患者の年齢分布を図3に示した。CA16で,2歳以下の乳幼児の占める割合が年ごとに減少している。

 手足口病症例では,EV71,CA16,CA10のそれぞれ95例(79%),80例(90%),43例(98%),鼻咽喉材料から,17例(14%),8例(9.0%),1例(2.3%)が皮膚病巣から,14例(12%),3例(3.4%),0例(0%)が便から分離された(同一人の異なる検体から重複して分離された例を含む)。EV71は全例培養細胞によって分離され,CA16は4例(4.5%),CA10は17例(39%)がマウス,残りが培養細胞によって分離された。



 速報:感染症サーベイランス情報によると,1995年の手足口病の流行は,1982年のサーベイランス開始以来,最大となった。一定点医療機関当たりの患者報告数は,第28週(7月9日〜15日)にピークとなり(7.69人),過去最高であった。累積患者報告数は東海・北陸,九州・沖縄,中国・四国で多く,北海道,東北で少ないが,第41週(10月8日〜14日)現在,北海道,岩手,秋田,山形,福島,和歌山,熊本で一定点当たり1.0人以上の報告がある。

 病原微生物検出情報事務局へ報告された手足口病の原因ウイルスは,10月20日現在,CA16が339例,EV71が32例で,そのうち300例および26例が手足口病症例であった。今のところ近畿以西からの分離報告が多い(図2および 本月報Vol.16,No.8参照)。 CA10による手足口病症例の報告はない。EV71例の2例,CA16の2例,CA10の1例に髄膜炎が報告されている。



図1. 地域別手足口病患者報告数の推移 1992-1994年(感染症サーベイランス情報)
表1. 手足口病症例からの年別ウイルス分離数 1982-1994年
図2. 手足口病症例から分離されたウイルスの地域別,月別報告数,1993-1995年
図3. 手足口病症例のウイルス別年齢分布 1992-1994年





前へ 次へ
copyright
IASR