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Vol.16 (1995/11[189])

<国内情報>
プールを介さないアデノウイルス3型の小学校内での集団発生−横浜市


 1995年6月下旬に横浜市内1小学校において集団かぜが発生した。症状的にはレンサ球菌感染症も疑われていたが,検査の結果,原因と想定される細菌は検出されず,患者4名のうがい液からアデノウイルス3型(Ad3)が分離された。流行後に行われたアンケート調査により,プールを介さない咽頭結膜熱の集団発生であることが推察された。

 今回集団かぜが発生したのは1年生3クラスで,在籍者は各クラスとも31名であった。図1に,6月12日〜30日までの各クラスの欠席者数の推移を示した。3組の児童Aが咽頭結膜熱の診断を受け12日〜15日まで欠席しており,その後19日から欠席者が急増した。欠席者が増加した時期にはクラス間で1日程度の差がみられ,3組,2組,1組の順であった。3組は22と23日,2組は23日に学級閉鎖となった。23日に2組1名,3組3名の患者からうがい液を採取し,HEp-2細胞,Vero細胞およびRD-18S細胞を用いてウイルス分離を行った。その結果,4検体すべてからAd3が分離された。これらの患者はいずれも結膜炎を発症し,また咽頭発赤や発熱などの症状も認められ,本型感染による咽頭結膜熱の集団発生であることが推察された。

 アンケートは1年生全員について実施した。保護者に記入を依頼し,回収率は91%(85/93)であった。このうち流行期間中(6月12〜30日)に症状がみられた者(発症者)の割合は53%(45/85)であった。クラス別では1組30%(9/30),2組73%(22/30),3組56%(14/25)で,1組が他の2クラスに比べて低い値であった。図2に,症状の発現頻度を示した。発熱が89%と最も多く,そのうち74%が39.0℃以上であった。その他,倦怠感,食欲不振,咽頭痛,頭痛が半数以上に認められた。結膜炎の発現頻度は24%で,これをクラス別でみると1組と2組が11%,14%と低く,3組は50%であった。なお,兄弟にも症状がみられた例は41%で,主な症状は発熱と咽頭痛であった。

 本ウイルスの流行については,これまでにプールを介した咽頭結膜熱の集団発生の事例が各地で報告されている。しかし今回の集団発生は,当時,学校ではまだプールの使用を開始していなかったことから,学校内でプールを介さずに感染が広がったと推定される。なお,プールを介さないと推測される集団発生については,石川県の肢体不自由児施設における施設内感染が報告されている (本月報Vol.16,No.3)

 また,1組の発症率は他の2クラスに比べて低かったが,教室の配置をみると2組と3組の教室は隣接しており,1組は両教室とは離れた所にあった。これがクラス間の感染機会の差の要因として考えることもでき,Aを流行全体の初発患者として各クラスに流行が広がった可能性が推察される。しかし,他の2クラスにもAと同時期に欠席した児童がいるため、各クラスに初発患者がいた可能性も否定できない。

 現在,分離されたウイルス株間の類似性を検討するために,各株のDNAについて制限酵素切断片の分子サイズの比較を行っている。

 最後に,検体採取にご協力いただいた南保健所の担当者,ならびにアンケートにご協力いただいた関係者の方々に深謝します。



横浜市衛生研究所
七種美和子 宗村徹也 川上千春 野口有三


図1. 欠席者数の推移
図2. 症状の発現頻度





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