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Vol.16 (1995/11[189])

<国内情報>
新規肝炎ウイルス(G型肝炎ウイルス)の発見


 1988年,米国のChiron社のグループにより非A非B型肝炎ウイルスのひとつとしてC型肝炎ウイルス(HCV)が発見され,その遺伝子構造の解明に伴ってC型肝炎の診断法も確立され,輸血後肝炎は激減した。しかし現在でも,非A非B型肝炎の10〜20%はC型,E型肝炎ウイルスでない未知のウイルス感染によることが示唆されていた。

 1995年になって,2つのグループからほぼ同時に新しい肝炎ウイルス発見の報告が全く独立になされた。米国のGenelabs社のグループは,輸血後慢性肝炎を発症した患者血漿からイムノスクリーニングの手法を用いてフラビウイルスに属すると考えられる新しいRNAウイルスを発見し,これをG型肝炎ウイルス(HGV)と呼んだ。HGVRNAの検出は,5'非翻訳領域を標的とするRT-PCRにより行われているが,現時点ではHGV感染とALTレベルの間に強い相関はなく,このウイルスが肝炎発症の原因だとしてもその症状は穏やかであると考えられる。HGV陽性者から供血を受けた時に陽転する例が見られることから輸血により伝搬されると考えられる。HGVRNA陽性患者にインターフェロンを投与すると陰性になることからこのウイルスはインターフェロンに感受性をもつことは確実としても,投与を中止すると再び陽性になることからウイルス排除は困難なようだ。

 一方,ほぼ同時にAbbott社のグループも新規肝炎ウイルスと思われる核酸を発見している。その由来は1967年に急性肝炎を発症した34歳の外科医の血清で,タマリンに急性肝炎を発症させ,またタマリンでの継代が可能であることが知られていた。この未知の因子は患者のイニシャルをとって“GB agent”と呼ばれ,既知の肝炎ウイルスのいずれとも異なることが知られていたが,Abbott社のグループはタマリン血清からやはりフラビウイルスに属すると考えられる新規ウイルス核酸のクローニングに成功したのである。現在のところ3種類のGBV(A,B,C)が見出されているが,GBV-Aはタマリン由来のウイルスであることが現在では強く示唆されている。GBVの検出は,PCRとELISAが開発されているが,現在のところはPCRによる検査とELISAによる検査の結果が全く相反しており解釈が困難である。信頼できる確実な検査法の確立が急務であろう。

 Genelabs社のHGVとAbbott社のGBVとの関係については,Genelabs社のHGVの核酸配列がまだ明らかになっていないため何ともいえないが,同一ではないにしても類似したウイルスである可能性は高いと思われる。これらのウイルスが本当に肝炎発症の原因ウイルスと証明されているわけではない。今後これらのウイルスを簡便かつ確実に検出するアッセイ系が開発されることがまず必要である。



国立予防衛生研究所ウイルス第二部
石井孝司 松浦善治 宮村達男





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