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Vol.16 (1995/12[190])

<国内情報>
中枢神経系に及ぶコクサッキーB群ウイルス感染症の発生−香川県


 1995年1月以降の冬期間を中心として,全県的にコクサッキーB群ウイルス(CB)による脳炎,脳・脊髄炎および脳症の発生が,無菌性髄膜炎などの流行に交じって表に示すように散発的にみられたが,他県に比べ高い発生率と考えられるので,以下事例を報告する。

 このシーズンにおける県下のエンテロウイルスは,CB1〜5型のみが分離され,エコーウイルス(E)は分離されなかった。現在におけるこれら分離ウイルスに占めた中枢神経系症状関連ウイルスは,CB2型72株中4株(5.6%),3型22株中7株(32%),5型117株中2株(1.7%)の13株であった。これでみると,3型の比率が高くなっている。

 このうち,脳炎発症で髄液から3型を分離し,8日後,髄膜炎,脳症として髄液から再度3型が分離された症例があった。また,髄液と咽頭ぬぐい液から3型が分離された例が脳炎,脳・脊髄炎それぞれ1例みられた。

 これらウイルスが分離された10患者を年齢的にみると,生後2カ月〜7歳までに分布しているが,病名,また分離ウイルス株との関係,あわせて患者住所地からみた地域性など,ウイルス的な特徴は認められなかった。

 本症の発生を季節的にみると,2型は3〜6月,3型は1〜2月,5型は4〜7月であり,その大部分は1〜3月の冬期間に集中していた。

 また本ウイルスはFL,HeLa細胞でよく増殖し,本症以外で分離されたウイルスとの間に認められる差はなかった。

 ちなみに1994年におけるエンテロウイルスが原因と思われる本症の状況をみると,脳炎,脳,脊髄炎,脳症からE9が5株,E11が1株分離され,6症例であった。このシーズンに無菌性髄膜炎起因ウイルスとして流行形態をとったのは,E9であり,CBは2型,3型,5型が分離されたが少数で,大きな流行にはならなかった。



香川県衛生研究所
山中康代 亀山妙子 三木一男 山西重機


表 中枢神経系に及ぶコクサッキーB群ウイルス感染症





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