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Vol.16 (1995/12[190])

<国内情報>
1994/95インフルエンザシーズンにおける流行の様相と流行ウイルスの抗原性について


 全国のインフルエンザサーベイランス事業と予研呼吸器系ウイルス室にて全国地方衛生研究所の協力のもとに独自に実施しているインフルエンザウイルス分離情報によれば,1994/95インフルエンザ流行シーズンは,1993/94シーズンと同じくA香港型が主流であり,これにB型が追従し,さらにAソ連型がごくわずかに参加するという様相を示した。

 例年よりやや早めの10月初旬に大阪府でAソ連型が検出され,その後約2カ月過ぎた12月初旬になってから札幌市でこの型による小規模な流行が確認された。一方,10月中旬に仙台市でA香港型が,さらに,1カ月後の11月下旬に山形県と鳥取県でB型が分離されたという報告を受けた。

 流行ウイルスの動きに関して詳しくみると,10月第1週〜2週にかけて確認されたAソ連型ウイルスはその抗原性を最近のウイルスと異にしていたが,流行に至らなかった。しばらくして12月の第1週〜翌3月の第2週にかけてワクチン株に類似するAソ連型ウイルスが緩慢に動いたが,ごく限られた地域でほんのわずか分離されたにすぎなかった。一方,10月第3週〜4週にかけて分離されたA香港型ウイルスは12月第1週頃まで一時途絶えたが,この週あたりから活発に動きだし,全国的に分離された。分離ウイルスの数は,1月の第2週にピークに達し,第4週あたりから漸次減少して3月第2週には消退した。他方,11月第5週に分離されたB型ウイルスは1月第4週頃まで非常に静かな動きであったが,このあたりからA香港型に取って代わって活発化の傾向を示し,3月第2週をピークに5月の第1週までだらだらと引き続いた。

 分離株の抗原性は,A香港型,B型とAソ連型の大部分で予想通りそれぞれの型のワクチン製造株と類似していた。

 最初に,本シーズンの主流となったA香港型の分離ウイルスの抗原性については,ワクチン株を基盤にすると,表1から明らかなように,ワクチン株のA/北九州/159/93のホモ抗体価(HI価)が1:1,024のとき,流行ウイルスのほとんどが1:512〜4,096を示し,ホモ価に近いかそれ以上の価を示した。一方,A/宮城/29/95などのようにA/秋田/194の抗血清にも強く反応するか,あるいはA/滋賀/7/95のように両抗血清にやや低めに反応するウイルス,またはこの2つの抗血清のホモ価の4分の1〜8分の1程度しか反応しないA/福岡C-1/95のようなウイルスも認められた。

 次に,B型分離ウイルスの抗原性については,表2に示したようにワクチン株のB/三重/1/93ウイルスのホモ価が1:512のとき,分離ウイルスは1:256〜1,024を示した。したがって,本シーズンに分離されたB型ウイルスのほとんどがB/三重/1/93類似株であった。

 最後に,本シーズン中にごくわずかに分離されたAソ連型分離ウイルスの抗原性については,表3にみられるように,予測通りワクチン株のA/山形/32/89とほぼ一致したが,10月第1週頃に分離されたA/大阪/539/94ウイルスは,用いた1986年以降の代表的なAソ連型抗血清のすべてに1:32とかなり弱い反応を示した。さらに,このウイルスを詳細に調べたところ,イタリアかぜ時代の代表的なウイルスのA/FM/1/47とソ連かぜ(Aソ連型)の初期のA/USSR/92/77ウイルスの抗血清の両方に強く反応した。しかし,このウイルスは大阪地域で6月と10月に確認されたが, (本月報Vol.15,No.9 および Vol.16,No.1参照), 本シーズン中には再び現れなかった。



予研ウイルス第一部呼吸器系ウイルス室


表1. 1994/95流行シーズンに分離されたインフルエンザウイルスA香港(H3N2)型抗原分析
表2. 1994/95流行シーズンに分離されたインフルエンザウイルスB型抗原分析
表3. 1994/95流行シーズンに分離されたインフルエンザウイルスAソ連(H1N1)型抗原分析





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