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Vol.17 (1996/1[191])

<国内情報>
腸管出血性大腸菌O157:H7感染症によると推定される小児の死亡例−北海道


 1995年10月,溶血性尿毒症症候群(HUS)と診断された道内の小児1名が死亡した。患児は札幌市内の8歳の男子で,10月9日夕方から腹痛と下痢が出現した。翌10日も同様の症状が続いて腹痛がさらに強まり,11日午前0時から血便が出現したため,午前4時,市内の夜間急病センターで受診し点滴を受けた。しかし,症状改善が見られなかったことから同日朝,近医で再受診し,総合病院小児科を紹介され即時入院となった。

 入院時,体温は37.1℃,意識は清明,臍上から下腹部にかけて圧痛が認められた。そこで,細菌性胃腸炎を疑い,絶食,補液,抗菌剤により治療を開始したが腹痛と頻回下痢は持続した。同日,抗菌剤投与前の糞便の細菌培養検査を臨床検査所に依頼した。10月13日,血小板減少と尿素窒素(BUN)およびクレアチニン(Cr)の上昇が現れ,細菌培養検査で病原大腸菌免疫血清O157に凝集する大腸菌が検出されたためHUSを疑い,メシル酸ガペキサート(タンパク分解酵素阻害剤),新鮮凍結血漿投与を開始した。さらに10月14日にガンマグロブリンの大量投与を開始したが乏尿状態になった。翌15日には腹膜潅流を開始したが,その後も腹痛,乏尿,不穏状態が続いた。10月17日,腹膜潅流中に突然心停止を来たし,一時回復したが次第に蘇生処置に反応を示さなくなり,同日死亡した。経過は発病日と含めて9日間であった。

 10月11日の主な検査所見は,白血球数12,700/mm3,BUN7r/dl,Cr0.3r/dl,,GOT30IU/l,GPT6IU/l,LDH561IU/lであったが,その後の最高値は白血球数31,500/mm3(13日),BUN137.2r/dl(15日),Cr5.5r/dl(16日),GOT269IU/l(17日),GPT48IU/l(17日),LDH11,560IU/l(17日)であった。

 上記患者からの分離菌株は北海道衛研でVT2のみ産生のEHEC血清型O157:H7であることが確認された。なお,本症例の感染源は特定できなかった。



北海道立衛生研究所 相川孝史
株式会社 大給臨床検査所 大内裕敬 木浪ゆう子
国家公務員共済組合連合会幌南病院小児科 松薗嘉裕





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