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Vol.17 (1996/1[191])

<国内情報>
1995年11月からのインフルエンザの流行−大阪府


 1994年6月,大阪府下において,比較的古い流行株(1980年迄)に類似の抗原性を示すインフルエンザA(H1)型ウイルスが分離され,本月報(Vol.15,No.9,195,1994)に報告した。その後,この型のウイルスは,10〜11月にも散発例として分離確認されたが,流行株とはなり得ず,前シーズンは,95年年明けからインフルエンザA(H3)型,引き続いてのB型二峰性の流行に終わった。

 1995年11月に入り,大阪ではAPEC開催地として,少々異様な静けさが漂う毎日だったが無事終了,これと前後して,関西地方ではこの時期としてはめずらしく比較的低温の日が続き,毎日のように乾燥注意報が出され,現在も続いている。

 このような気候条件下,初秋よりかぜ様患者の病因検索を続けていたが,11月17日府下定点病院で採取された検体(うがい液)からインフルエンザA(H1)型ウイルスが分離確認された(余談であるがAPEC関連の交通規制で,検体受け付けは約1週後になり分離作業,報告が遅れた)。予研インフルエンザセンターからの報告ではほぼ同時期,神戸市内でも集団発生例で同型ウイルスが確認されている。その後,月末(11月28日検体採取)には,集団発生例でも同型の感染を確認した。現在まで,サーベイランス定点からの検体,集団発生例を含め,約40株の同型ウイルスを分離同定したが,それらは,ほぼ大阪府下全域にわたっていた。これらの分離ウイルスの抗原性は,ワクチン株A/山形/32/89(H1)株に類似していた。分離にはMDCK細胞を,HA,HI反応には,初生ヒナ血球を使用した。

 流行状況を施設閉鎖数でみると,11月末から急激に立ち上がり,12月第1週累計90弱,第2週累計170強の施設が閉鎖措置を取っている。

 このような比較的早い時期にインフルエンザの流行が起こった原因の一つは,この型の流行が1991/92シーズン以来であり,ワクチン接種率の低下に加えて,低年齢層でのインフルエンザA(H1)型に対する抗体保有率の低下,すなわち感受性個体の増加が考えられる。これは,閉鎖施設の内容をみると,小学校低学年(1,2年),幼稚園に集中していることからもうかがわれる。その上,気候条件はインフルエンザの流行には都合がよく,かつ,インフルエンザA(H3),B型の侵淫がない時期でもあり,感染が拡がったと見られる。

 現在,ウイルスが分離された患者の主症状は,発熱,上気道炎である。しかし好発年齢が比較的低年齢に偏っているので,重症患者の出ないことを望んでいたが,今日,痙攣,急性脳症(死亡)等の検体も搬入されたので,さらに監視を続け,情報の収集,伝達を進めたいと考えている(1995年12月18日)。



大阪府立公衆衛生研究所
前田章子 加瀬哲男 奥野良信





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