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Vol.17 (1996/1[191])

<国内情報>
病棟内におけるSRVによる急性胃腸炎の集団発生−千葉県


 1995年2月,千葉県内の病院の重症心身障害児の病棟内で,発熱,嘔吐を主徴とする疾患の集団発生がみられ,患者便からSRVを検出したのでその概要を報告する。

 集団発生は,4病棟のうち1病棟で発生した。患者発生は2月20日から始まり2月23日をピークとして2月28日まで続いた(図1)。発病率は,入院患者は78%(40名中31名),職員は18%(28名中5名)であった。職員の発症者は,看護婦,看護助手,保母(摂食助手)であった。臨床症状は,発熱,嘔吐が高率で下痢はほとんどみられなかったことから,当初はインフルエンザの流行を疑った。患者の咽頭ぬぐい液のウイルス分離では,14名中2名からインフルエンザA(H3)型を分離したが,ペア血清のHIではA(H3)型の抗体上昇はみられず,B型の抗体上昇が1名にみられた。一方,便材料の電子顕微鏡(電顕)観察では,12名中5名から粗い表面構造を有するSRVを検出した。検出したSRVを抗原とした免疫電顕では,患者血清14名中12名に抗体上昇が認められた。以上の結果から,今回の病棟内の集団発生はSRVによることが確認された。

 入院患者の多くは経管から栄養をとっており,食物はすべて加熱したものであった。また,同じ食物を喫食した他の病棟で患者はみられず,病棟間の職員の移動もなく,職員の発症もその病棟にかぎられていた。これらのことを考えあわせると,今回の集団発生はヒトからヒトの感染によると思われた。

 速報:千葉県結核・感染症サーベイランス患者情報によると,今秋10月中旬より感染性胃腸炎の流行がみられており,患者発生は例年より1〜2週早く第42週から増加し始め,第46週には定点当たりの患者数が21.86人となった。これはサーベイランス事業開始以来の最高値であった。その後もまだ患者発生は続いている。数カ所の病院で得られた便材料について電顕検索を行ったところ,17検体(乳児10,小児6,成人1)中14検体(乳児8,小児6)から粗い表面構造を有するSRVを検出した。引き続き本ウイルスの動向に注意したい。



千葉県衛生研究所
篠崎邦子 山中隆也 小川知子 時枝正吉 小倉 誠 市村 博
国立下志津病院 佐藤好範
千葉市立海浜病院 黒崎知道
千葉大学付属病院 金子慎一


図1 患者発生状況





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