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Vol.17 (1996/5[195])

<国内情報>
エコーウイルス33型による無菌性髄膜炎の流行−群馬県


 群馬県において1994年5月〜8月にかけて,本邦では今まで報告がごくわずかであったエコーウイルス33型(E33)による無菌性髄膜炎(AM)の流行があったのでその概要を報告する。

 E33が分離された患者の分離材料等を表に示した。4症例のうち3例は,ほぼ同時期に発症し,小学校も同じであった。臨床的には,発熱,頭痛,嘔吐,頚部硬直,ケルニッヒ徴候,リンパ球優位の髄液細胞数増加等AMに典型的な所見が認められた。全例ともAMに対する一般的な対症治療を行った。数日後に軽快し,予後も良好であった。

 ウイルス分離には,Vero,RD-18S,HEp-2,HeLa,HEL細胞を用いた。細胞変性効果(CPE)は,RD-18SおよびHELに確認された。分離株は,エンテロウイルス中和用混合抗血清(デンカ生研社製)をすべてbreak throughしたため,引き続きCA単味抗血清を用いて中和試験を行った。その結果,CA24(EH24/70)およびCA24 variant(CA24v,NV-37-87)ウサギ抗血清がRD-18SでのCPEの出現を遅らせたため,分離株はCA24あるいはCA24vであることも考えられた。しかし,エンテロウイルス共通プライマーを用いたRT-PCRではウイルス遺伝子は検出されたが,CA24vの特異プライマーでは標的遺伝子が検出されなかった。また,異なった温度(33および36℃)によるRD-18Sでの経時的なCPEの違いもほとんどみられなかった。そこで,分離株の一部の同定を国立予防衛生研究所に依頼し,同時に当研究所でE33単味抗血清(愛知県衛生研究所より分与)とHEL細胞を用い,中和試験を行ったところ,今回の症例から分離された株はすべてE33であることが判明した。

 E33は,本県ではその後,1994年12月に発熱および上気道炎の患者から1株分離されているのみであるが,1995年の臨床ウイルス学会で報告された愛知県での新生児例は劇症型であったことが報告されているため,今後の動向には十分な注意が必要であろう。



群馬県衛生環境研究所
木村博一 山木宣雄 大淵正枝 土田 秀 金澤勝次 大月邦夫
桐生厚生総合病院小児科
桑島 信 竹内東光
国立予防衛生研究所
長谷川斐子 武田直和








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