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Vol.17 (1996/6[196])

<国内情報>
わが国における新血清型赤痢菌の検出例


 赤痢菌の血清型分類は,1984年にInternational Committee on Systematic Bacteriology, Subcommittee on the Taxonomy of Enterobacteriaceaeにより,血清型の追加を主とする改定がなされ,現在この血清型分類に基づく血清型別が,わが国はもとより国際的に広く用いられている。しかしこの改定以降も,この血清型分類に該当しない追加すべき新血清型のあることが報告されてきている。表1に,これまでに新血清型として提案されているShigella dysenteriaeおよびS. boydiiの各血清型,ならびに我々が新しい型抗原を保有すると報告したS. flexneriについてまとめて示した。

 我々は,赤痢菌の血清型別に上述の新しい血清型分類に基づき整備された市販の診断用抗血清を使用してきているが,生化学的性状や病原性において赤痢菌と疑われるにもかかわらず,これら既知血清型に一致しない分離株に少なからず遭遇している。そしてそれらの菌株についてはO抗原分析を実施し,既知あるいは提案中の新血清型との異同について検討してきた。本報では,都立衛生研究所において分離あるいは同定依頼された菌株で,表1に示した新血清型に該当することが確認された赤痢菌の血清型,およびそれらの検出例について紹介する。

 1995年までの新血清型赤痢菌の検出例を表2に示す。S. dysenteriaeではI9809-73とE23507,S. flexneriでは88-893(群抗原6を保有するものと,3,4を保有するものがある)および89-141(群抗原3,4を保有するものと,7,8を保有するものがある),S. boydiiではE16553,合計5種類の新血清型赤痢菌が31症例より分離されている。なお,S. flexneri 88-893の5症例と同89-141の1症例以外は,主にインド亜大陸や東南アジアから帰国した海外旅行者による輸入事例であった。

 下痢症患者,特に海外旅行者からの病原菌検索の際は,ここに述べたような新血清型赤痢菌についても十分注意を払う必要がある。



東京都立衛生研究所微生物部 松下 秀


表1. 赤痢菌の新血清型に関する報告
表2. 新血清型赤痢菌の検出状況





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