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Vol.17 (1996/6[196])

<国内情報>
1996年冬期エコーウイルス4型によって局地的に大流行した無菌性髄膜炎−大阪府


 1996年3月6日頃から大阪府の北部に位置する池田市内において学童に髄膜炎の発症が続発し,週明けの市内病院の外来は突然のパニック状態に陥った。1校で100名以上が欠席した小学校もあり,患者発生の多かったH小学校では学校閉鎖が,F小学校では2日間の学級閉鎖の措置がとられた。

 これらのうち,市立病院に入院した患者について臨床的,ウイルス学的検索を行った。入院患者24名のうち10名の髄液,咽頭ぬぐい液からウイルス分離を試み,10名の全検体からエコーウイルス4型(E4)が分離され,本流行の起因ウイルスであることが明らかになった。ウイルス分離はRD-18S,LLC-MK2細胞共に初代からCPEが認められたが,特にRD細胞に対して感受性が高かった。しかし血清型の同定は容易ではなく,E4標準株抗血清は100TCID50のウイルスを中和しなかったため,さらにウイルス液を希釈して同定を行った。

 入院患者24名の年齢は5〜12歳(平均9.8歳)であり,20名が男子であった。臨床症状は,発熱が認められたもの96%,以下,頭痛100%,嘔吐96%,腹痛17%,下痢13%,項部硬直67%,ケルニッヒ徴候42%であったが,全例予後は良好であった。患者の同胞33名中9名に家族内感染(発症者)がみられたが,入院が必要であったのは1名のみであった。E4に対する中和抗体の有意な上昇を認めたもの6名,回復期に128倍以上の抗体価を示したもの7名で,血清学的にもE4の感染が裏付けられた。

 今回の流行の特徴は,エンテロウイルスとしては異例の冬期の流行であり,学級閉鎖となったのは1991年夏のエコーウイルス30型の流行以来であった。また,流行のピークは一峰性であり,周辺都市での流行は認めなかった。E4は1989年以来7年ぶりの流行であり,大半の学童が抗体を保有していなかったことが今回の流行をもたらしたものと考えられた。今夏の動向に注目すべきウイルスであろうと思われる。



大阪府立公衆衛生研究所 山崎謙治 奥野良信 峯川好一
市立池田病院 蘆野信彦
大阪府池田保健所 中川雅史





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