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タイでは1978年のジフテリアトキソイドの導入および,その後のEPIによるワクチン接種の促進により,1984年にはジフテリアの発生数は国全体で1,021名だったが,1993年には25名に減少した。しかし,1994年にサラブリ州(人口565,067人)でジフテリアの集団発生があった。タイ公衆衛生省疫学部によると,1994年4〜8月の間にプラブダバス地区(流行の中心地)で合計18名画ジフテリアと診断された。そのうち3名が死亡,性比は1:1,年齢分布は2歳〜37歳,3名は5歳以下で,12名は5歳〜14歳であった。すべての症例で発熱,喉の痛みと扁桃腺炎および偽膜を伴った。ジフテリア・破傷風・百日咳ワクチン(DTP)3回以上の接種が完了している者が6名いた。流行の発端者と思われる者は発症の前月にタイ北部から移住してきた山岳民族出身者であったが,発病者の大部分(16名)はタイ族であった。家庭内接触者(23名)と学校内接触者(74名)の咽喉スワブ検査の結果,それぞれ4%,8%からCorynebacterium diphtheriaeが分離されたが,すべて不顕性感染であった。
今回の原因として,ジフテリアに感受性の学童あるいは未就学児が多くいるということがあげられ,その理由として初期のEPIプログラムのワクチン接種の普及が徹底していなかったことや,ジフテリアの流行が急速に減少したことにより,自然感染の機会がなくなりブースター効果が減ったことなどが考えられる。対策として,1歳以上の未接種の未就学児および学童に対してジフテリアトキソイドの接種を行うことと,青少年,成人の定期的なジフテリアトキソイドの追加接種が推奨される。
(CDC,MMWR,45,No.13,271,1996)
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