HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.17 (1996/8[198])

<国内情報>
大阪府堺市における学童を中心とする下痢症の集団発生について


1. 概要

 1996年7月13日(金)午前10時,堺市環境衛生課に,市立堺病院から前日の夜間診療で下痢,血便等を主症状とする小学生の患者10名を診察したとの報告があり,市で調査したところ市内の複数の小学校にわたり多くの患者が発生しており,入院患者もいることが分かった。

 市ではただちに対策本部を設置し,患者の対応とともに,原因究明等を開始した。患者の共通食は学校給食であるため,原因施設として学校給食施設を有力視し,給食の保存食検査,施設の立入検査を行い調査中である。

 堺市の学校給食は,いずれも単独校調理方式であるが,メニューは同一であり殖財は73業者が1カ所に持ち寄り,運送業者により各学校に配達されている。このため,食材料については,生産者に至るまでの流通経路に沿って調査を実施している。

2. 調査状況(1996年7月21日現在)

 1. 堺市人口  約80万人

   小学児童数 47,575人

 2. 発生学校数 92校中61校

 3. 児童の患者累計 6,414名

   [うち入院中471名(HUS患者77名)]

    HUS患者のうち29名は透析,血漿交換を行っている。

 4. 教職員等学校関係者患者累計 74名

 5. 推定二次感染者累計 73名

   [乳幼児32名(HUS3名),中学生以上41名(HUS1名)]

 6. 検査結果等:有症者検便542検体中287検体からE. coli O157を検出。

   食品などからは,まだ検出されていない。

3. 厚生省の対応

 近年の食中毒の傾向から,食品衛生調査会食中毒部会に「大規模食中毒等対策に関する分科会」を設置し,学校給食を始めとする大規模調理施設の対策について検討していたところ,5月28日の岡山県邑久町(おくちょう)を始めとしE. Coli O157による集団発生が続発したことから,全国各自治体あて食中毒防止の徹底および流通経路の調査を含む原因究明の徹底について通知を発出し,さらに,6月27日に,「腸管出血性大腸菌に関する研究班」を緊急設置し,(1)DNAパターンの分析等による菌株間の相同性,(2)原因の疫学的究明,(3)食肉(国産,輸入)の汚染実態,(4)診断治療に関する調査研究を開始している。

 堺市の事件については,7月14日に厚生省担当官を現地に派遣し情報収集に努めるとともに,翌15日には,原因究明等の協力のため国立予防衛生研究所等の専門家4名および厚生省担当官1名を派遣した。また,7月17日には,堺市,大阪府および厚生省からなる「病原性大腸菌O157食中毒原因究明三者連絡調整会議」を設置し,4つのプロジェクトチームによる原因の徹底的究明を精力的に行っている。また,自治体等関係期間に対し,検食の保存期間の暫定的延長や夏期食品一斉取締りの実施期間を延長し,監視指導の強化および関係者の衛生教育を実施する旨,通知した。



厚生省生活衛生局食品保健課





前へ 次へ
copyright
IASR