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1995年12月〜1996年2月に,オンタリオの病院で,細菌性の疾病だと思われた4名の患者から本来魚類の病原菌であるStreptococcus iniaeが分離された。4名は皆中国系である。最初の3例は40〜74歳の健康な女性である。全員養殖の淡水魚(うち2例はティラピアと判明)を扱っており,その際に魚の骨や背鰭,あるいはナイフで手に怪我をしていた。負傷してから16時間〜2日で発熱(38〜38.5℃)と負傷部の近傍のリンパ節の腫脹を伴った蜂巣炎が生じた。全員の血液培養からS. iniaeが検出された。βラクタム剤あるいはクリンダマイシンの投与により病状は改善された。4例目の患者は77歳の男性で,糖尿病,リューマチ性の心臓病,ページェット病などの病歴があった。1週間前から膝の痛みがあり,発汗,発熱,呼吸困難および,意識混濁のため入院した。約10日前に生のティラピアを扱ったが,その際に怪我をしたかどうかは不明である。右膝部に蜂巣炎を伴わない広範囲の滲出と発熱があった。白血球数の著しい増加および心雑音が認められた。血液培養からS. iniaeが検出され,心エコー図で僧帽弁に疣形成が認められたことから,S. iniaeによる心内膜炎および髄膜炎と診断された。βラクタム剤の投与により回復した。
ヒトにおけるS. iniaeの最初の感染例は1991年テキサスにおいてであり,2例目は1994年にカナダのオタワで起きた。今回が3例目である。ティラピアはアメリカを始め世界中で養殖されている淡水魚である。淡水魚を扱う際に負傷すると,S. iniaeに感染する可能性が示唆される。
(CDC,MMWR,45,No.30,650,1996)
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